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第177話
驚く面々に対し、得意気な表情を浮かべる真木。
「元々vaɪpərの頭張ってたのが、菊地さんだ。
……コンクリ事件で、菊地さんを含めた上層部四人が捕まったが、今でもこのチームが解散もせずに存在し続けている理由は───お前、解るか?」
真木の視線が、五十嵐から僕に移り、愁で止まる。
「……さぁ……」
「お前、何も聞いてなかったんだな」
引き攣った笑いを浮かべながら、あからさまに視線を泳がせる愁。そんな愁に呆れ顔の真木が、一度口を閉ざし、五十嵐に鋭い眼孔を向けた。
「ヤクザの幹部が、目を付けたからだ」
真木の言葉に、五十嵐が息を飲む。
それは愁も同じで、今初めて聞いたような表情を浮かべていた。
「その幹部が、統制の崩れたvaɪpərのリーダーを適当に宛い、ソイツをお飾りにして、裏では菊地さんが操っていたんだよ」
『俺は当時、これでも暴走族時代だった頃の、vaɪpər の頭張ってたからな』──そう言った菊地の言葉が脳裏を過る。
「……でもよぉ。じゃあ何で、ネンショー出た菊地さんが、今リーダーになってねぇの?」
ナイフで切ったハンバーグの欠片を口に放り込んだ愁が、素朴な疑問を吐く。
瞬間──脳裏に浮かんだのは、儚げな表情の、倫。
涼やかな立ち姿。菊地を見る潤んだ瞳。
しなやかな身体つき。白い肌。そこから漂う、大人の色香。
……まさか、
倫の為に………?
テーブルの下で組んだ手に、ギュッと力を籠める。
「………さぁな。
あのアトピーだろ? 人前に出れる面じゃねぇって、自覚してんだろ」
汚いものを見たかのように、真木が目を眇める。
「あー、……だな。チームの顔があれじゃあ、憧れて寄ってくるヤツ、いなくなるしな」
何度も軽く頷きながら、愁が添え物のフライドポテトをフォークで突き刺す。
「……あの、真木先輩」
未だ料理に手を付けてない五十嵐が、少し怯えた表情のまま口を開く。
「菊地さんがリーダーだって情報……蕾先輩は、どうやって知ったんですか……?」
「……ア″ァ!?」
少しだけ冷めてしまったピザを恨めしそうに口に含んだ真木が、うぜぇ…とばかりに五十嵐を下から睨み上げる。
「……だよなぁ! 真木、それ俺も知りてぇ!」
「クソ……。テメェも蕾を疑ってんのか」
不穏な空気を感じていないのか。愁が軽い口調で便乗すれば、鋭い視線の矛先が其方に移る。
「……蕾は、菊地さんと同じネンショーに入ってたんだよ」
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