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第176話

複数の男女を無差別にレイプしまくっていた蕾は、15歳で逮捕。 収監先の少年院には、犯罪者達を纏めていた菊地が君臨していたという。 「そん時の菊地さんは既に、太田組幹部の桜井って人物と太い繫がりがあったらしい。何度か面会に来ていたって言ってたからな」 ……桜井…… 聞いた事もない。 それに、モルの話だと太田組は、大友組と虎龍会に分裂したと言っていた。 そんな事を考えていると、真木が得意気な顔つきに変わる。 「……それにな」 蕾が入所して数年後──殺人及び殺人未遂の罪で逮捕された人物が収監された。 蕾の話によれば、入った当初は物静かで、そういったオーラは一切感じなかったという。 そのせいか。その日の内に、鬱憤の溜まった奴等から洗礼──食事中に絡まれ、盆の上のものを全て床に落とされ、それを這いつくばって食べろとの命令──を受けた。 しかし彼は、俊敏に飛び掛かり、その主犯を素早く床に倒して捩じ伏せると、何の躊躇もなく所持していた箸を振り上げ、相手の片目に突き刺した。 院内で。他の受刑者や監視員が居る中で。 強烈な障害事件を起こした彼は、他から一目置かれる存在となった。が…… 「そんな狂犬を、菊地さんは手懐けたらしい」 その後は売られた喧嘩を買う位で、特に問題行動を起こさなかった彼は、異例の早さで保釈された。 それは──裏社会に生きるに相応しい人物だと見抜いた菊地が、桜井に彼の話を持ち掛け気に入られた事で、暴力団組織の人間になるのを条件に、その様に取り計らわれたのだという。 「……ああ、それなら雷から聞いたぜ。 太田組の辻田龍成って奴だろ?」 ライスを口いっぱいに頬張りながら、愁が横入りする。 「……え」 ……辻田……龍成…… 瞬間、ドス黒いオーラを放つ龍成の顔が脳裏を過った。 確かに龍成は、菊地の事を『昔世話になった人』と言っていた。 殺人というのは、ハイジが話してくれた、孤児院の所長の事……だろうか。 妙な繫がりに、胸の奥底がドクドクと震える。 「……」 それにしても…… さっきから気になるのは、この人達が『太田組』と言っている事。 太田組は既に存在せず、大友組と虎龍会に分裂したはず。 暴力団の抗争を知らないのか。五十嵐が言うように、それだけ情報を遮断されているのだろうか。 「……他にもそういう斡旋はあったんだろうな。 蕾も仮出所の時、菊地さんに声を掛けられて、棲寝威苦(スネイク)の一員になったからな」 冷めたピザを口に押し込めた真木は、コーラでそれを飲み下した。

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