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第178話

複数の男女を無差別にレイプしまくっていた蕾は、15歳で逮捕。 収監先の少年院には、犯罪者達を纏めていた菊地が君臨していたという。 「そん時菊地さんは、既に太田組幹部の桜井って人物と太い繫がり(パイプ)を持ってたらしい。何度かそのヤクザが面会に来ていたって言ってたからな」 ……桜井…… 聞いた事もない。 それに、モルの話だと……太田組の組長が亡くなって、今や大友組と虎龍会の跡目争いが起こってるって…… そんな事を考えていると、真木が得意気な顔つきに変わる。 「……それにな」 蕾が入所して数年後──殺人及び殺人未遂の罪で逮捕された人物が収監された。 蕾の話によれば、入った当初は物静かで、そういったオーラは一切感じられなかったらしい。 そのせいか。その日の内に、鬱憤の溜まった連中から洗礼──食事中に絡まれ、盆の上のものを全て床に落とされ、それを這いつくばって食べろとの命令を受けた。 しかし彼は俊敏に飛び掛かり、その主犯を素早く床に倒して捩じ伏せると、何の躊躇もなく所持していた箸を振り上げ、相手の片目に深く突き刺したという。 院内で。他の受刑者や監視員が居る中で。 強烈な障害事件を起こした彼は、一目置かれる存在となった。が…… 「そんな狂犬を、菊地さんは手懐けたらしい」 その後、売られた喧嘩を買う位で特に問題行動を起こさず模範的だった彼は、異例の早さで保釈された。 それは──裏社会に生きるに相応しい人物だと見抜いた菊地が、桜井に彼の話を持ち掛け気に入られた事で、暴力団組織の人間になる事を条件に、その様に取り計らわれたのだという。 「………ああ、それなら(らい)から聞いたぜ。 確か、太田組の辻田龍成って奴だろ?」 ライスを口いっぱいに頬張りながら、愁が横入りする。 「……え……」 ……辻田……龍成…… 瞬間、ドス黒いオーラを放つ龍成の顔が思い出される。 確かに龍成は、菊地の事を『昔世話になった人』と言っていた。 殺人というのは、ハイジが話してくれた、孤児院の所長の事……だろうか。 妙な繫がりに、胸の奥底がドクドクと震える。 「……」 それにしても。さっきからずっと引っ掛かってるのは、この人達が言ってる──『太田組』。 ヤクザの世界は良く解らないけど。組長が亡くなったんだから、太田組はもう存在しない、……んだよね? だから龍成は、大友組に所属したんだろうし……その桜井って人も、大友組か虎龍会の何方かに移っている筈。 もしかして、内部抗争が起きてる事を知らないんだろうか。 五十嵐が言ってたように、この人達も情報を遮断させられてる……? 「……他にもそういう斡旋はあったんだろうな。 蕾も仮出所の時、菊地さんに声を掛けられて、vaɪpərの一員になったからな」 冷めたピザを口に詰め込んだ真木は、咀嚼した後コーラでそれを飲み下す。

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