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第180話
唾液の膜で覆われたそれが、僕の咥内を余す事無く舐る。
顎裏、歯列、頬裏……そして、僕の舌根……
クチュ……チゥ……
絡められる度に小さく響く、淫靡な水音。
キスが深くなり、菊池の生温かな唾液が注ぎ込まれ……上手く処理が出来ずに口端からトロリ…、と伝う。
……はぁ……
「……んぅっ、」
一度離された後、角度を変え、再びの深いキス。
息を上手く逃せられず……
苦しくて……菊地の袖をキュッと摑む。
「……」
……はぁ……はぁ……
離された、唇。
鼻先に吐息の掛かる距離で留まれば、菊地の指が顎から頬……耳元へと、肌の上を滑っていく。
「……ん、……」
ぴくん、と小さく震え
次第に熱を帯びていく、身体。
「感じてるのか……?」
蕩けた瞳で菊地を見上げれば、直ぐそこに浮かぶ……熱を帯びた双眸。
まだ湿った横髪を優しく搔き上げられ……剥き出される片耳。
その下から仄かに立ち籠める、甘く切ない匂い……
「クソ………今日はやらねぇって、決めてたってのに」
「………」
「……ああ、突っ込みてぇ……
奥まで突いて、滅茶苦茶掻き回して……さくらを、可愛い声で啼かせてみてぇ……」
吐息と共に吐き出される、苦しそうな声。
肩に回された手に力が籠もり、もう片方の手が僕の襟足に当てられ……額同士を付けたまま、堪えるように僕を強く抱き締める。
……どうして……
抱きたいのなら……すればいいのに……
菊地の脇から背中に回した手で、くん…、と服を引っ張れば……熱い息を吐く菊地が、僕の瞳を覗き込む。
「………馬鹿。煽るな。抱き潰して壊しちまうだろ」
「……」
……いいよ……して……
そうしなければ……
僕がここにいる意味が……解らなくなってしまうから……
薄く瞼を閉じ、顎をスッと突き出し──菊地の唇に、僕の唇を当てる。
「──さくら、」
軽く触れた途端──弾かれたように、僕から唇が離される。
少しだけ見開かれた瞳が、僕を見つめたまま大きく揺れて……
「……お前……誘って、んのか……?」
憂いを帯びた瞳で菊地を見つめながら……こくんと小さく頷いた。
「………はぁ…っ、……」
ぴちゃ……、ちぅ……、
何で……
ひくん、と身体が小さく跳ね、僅かに割れた唇から、甘っとろい声が漏れてしまう。
「………んぅ……」
ベッドに組み敷かれ、シャツの裾を捲り上げられ──露わになる肌……
ぷくっと小さく膨らんだ桜色の蕾に、菊地の熱い舌が這われた。
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