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第182話

唾液の膜で覆われたそれが、僕の咥内を余す事無く舐る。 歯列、顎裏、頬裏……そして、僕の舌根…… クチュ……チゥ…… 絡められる度に響く、淫靡な水音。 キスが深くなり、菊地の生温かな唾液が注ぎ込まれ……上手く処理出来ずに口端からトロリ…、と溢れ伝う。 ……はぁ…… 「……んぅっ、」 一度柔く離された後、角度を変え、再びの深いキス。 息を上手く逃せられず、苦しくて……菊地の袖をキュッと摑む。 「……」 ……はぁ……はぁ…… 離れていく唇。 鼻先に吐息の掛かる距離で留まり、顎に掛かっていた菊地の指が、頬から耳元へと滑り上がる。 「……ん、……」 ぴくん、と小さく震え、ゾクゾクする身体。触れられた所全てが、次第に熱を帯びていく。 「感じてるのか……?」 蕩けた瞳で菊地を見上げれば、間近で僕を見つめる、熱を帯びた双眸。 まだ湿っている僕の横髪を優しく搔き上げられ、剥き出される片耳。 その下から仄かに立ち籠める、甘く切ない匂い…… 「クソ………今日はやらねぇって、決めてたってのに」 「………」 「……ああ、突っ込みてぇ…… 奥まで突いて、滅茶苦茶に掻き回して……さくらを、可愛い声で啼かせてぇ……」 吐息と共に吐き出される、苦しそうな声。 僕の肩に回した手に力が籠もり、横顔を掻き上げた方の手が、僕の襟足を捕らえ……額同士を付け、目を強く瞑り、堪えるように僕の身体を強く抱き締める。 「……」 ……どうして…… 抱きたいなら……すればいいのに…… 菊地の背中に手を回し、くん、とシャツの布地を引っ張れば……熱い吐息を漏らした菊地が、再び僕の瞳を覗き込む。 「………馬鹿。煽るな。抱き潰して壊しちまうだろ」 「……」 ……いいよ……して…… そうしなければ…… 僕がここにいる意味が……解らなくなってしまうから…… 薄く瞼を閉じ、顎をスッと突き出し──菊地の唇に、僕の唇を当てる。 「──ッ、さくら」 軽く触れた途端──弾かれたように唇が離される。 少しだけ見開かれた菊地の眼が、僕を見つめたまま大きく揺れて…… 「……お前……誘って、んのか……?」 憂いを帯びた瞳で菊地を見つめながら……こくんと小さく頷く。 「………はぁ…っ、……」 ぴちゃ……、ちぅ……、 何で…… ひくん、と身体が小さく跳ね、僅かに割れた唇から、甘っとろい声が漏れてしまう。 「………んぅ……」 ベッドに組み敷かれ、シャツの裾を捲り上げられ──露わになる肌…… ぷくっと小さく膨らんだ桜色の蕾に、菊地の熱い舌が這われる。

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