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第187話

ザー…… 立ち上る湯気と菊地のせいで、逆上せそうになる。 顔が、熱い。身体も、心も……全て。 奥が疼き、今までとは違う胸の高鳴りに気付く。 そんな事、言われたの……初めてだ…… ……どうしてこの人は…… ここまで僕の事を…… 「……可愛いな、お前」 間近で揺れる、菊地の瞳。 手を伸ばし、そっと菊地の頬に触れる。 ざらざらとした肌。 左目下のジュクジュクした湿疹は、以前より範囲が広がっている。 でも……嫌じゃない。 菊地は、菊地だ。 例えゾンビだったとしても、何も変わらない。 今の気持ちは、絶対に…… もっと、僕を好きになって…… もっと触れて…… ……キス、して…… 「そんなに、煽るなよ」 頬に触れた僕の手を取り、指先にチュッとキスを落とされる。 「また、したくなるだろ……」 「………いい、よ」 溺れたい。 もっと、この人に。 とろとろに甘やかされて、蕩けてしまいたい。 「して……」 言うか言わないかのうちに、唇を塞がれる。 窒息してしまう程の深いキスに、意識が朦朧とする中……必死に菊地の首に、右腕を掛けた。

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