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第195話
「で。話っつーのは……
棲寝威苦 が弱小化してる件だ」
先程までとは違い、真面目な表情に変わる菊地。それにつられたのか。テーブルに置かれた料理に手を伸ばした深沢が、真剣な瞳を返した。
「知っての通り、各グループの実行班が幾つも摘発され、芋づる式に班長クラスまで逮捕されている。
これだけ警察 の検挙率が上がったのは、グループ自体が弛んでいるか、一般から吸い上げた実行メンバーに、警察 への密告者がいるかのどちらかだ。
下っ端含め俺ら棲寝威苦 は、詐欺や恐喝等の各グループに、何時でも何処でも出入りが自由。つまり……」
「その検挙された班のメンバーを洗い出せば、裏切り者がわかる……と?」
「ああ。そう睨んで調べてみたが、被ってる奴はいなかった。
……が、面白い奴を一人、見つけたんだよ」
胸元から取り出したスマホを操作し、菊地がテーブルに置く。
その画面をチラリと見れば、何処かで見た事のある、女性の顔写真だった。
「愛沢響平 。
元太田組のチンピラ、愛沢凌平の弟だ」
「──!」
……え……
驚いて、もう一度画面に目をやる。
ワンレンボブは、恐らくウイッグなんだろう。
気の強そうなつり目。童顔。深紅の唇。
……そうだ。
ハルオの所にいた、あの高飛車な男。
あの時ハルオは、彼を単なるセックスフレンドって言ってた。けど……多分、違う。
ハルオは僕に、弟を泣かせた恨みを凌から買ってしまった、と……
「……チッ。女装子か」
「何言ってんだ。倫にチャイナドレス着せといてよ」
スマホを手にして確認した深沢が、訝しい表情のまま菊地に返す。
……その凌も、僕を陥れようとしていたとはいえ……
僕のせいで……
「愛沢凌平が始末されたのは知ってるか?
上納金を納めるのもままならなかった奴が、ゲスいやり口で荒稼ぎしてたからな。
……ほら、去年あったろ。
家出少女をアパートに拉致監禁して、売春斡旋やアダルトビデオ製作をしてたっつー奴」
「……ああ。顧客名簿が一部メディアに流出して、問題になったヤツな」
……確か……
大物芸能人とか、政治家とか……
有名な人の名前が流れてしまって……
……それで、圧力が掛かって揉み消されたって……モルが……
「そうだ。
あん時は愛沢の自殺で片を付けた様だが……奴は単なる実行犯だ。奴に肩入れし、入れ知恵つけて、著名人との繫がりを支援してた奴が裏にいる」
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