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第198話

「……お前だけを狙ってんなら、奇襲でも何でも、直接手ぇ出してくる筈だ。 が、時間を掛けてまで棲寝威苦(スネイク)潰しにかかってる。 恐らく、刺客は響平だけじゃねぇ。 お前もろとも、本気で棲寝威苦(スネイク)を潰す気だ」 「……チッ」 一際大きな舌打ち。 既に深沢の瞳は邪気を孕み、深い闇を背負うリーダー格の風貌に変わっていた。 それを確認した菊地が、口元を緩める。 「油断すんなよ。恐らくもう、お前の信頼を得て動き始めている筈だ。 ……身近にいる奴を、あまり信用しすぎんな」 「………ふ、お前もな。菊地」 「ああ」 菊地がソファから立ち上がる。 既に脱力し、意識も殆どなく背もたれにしな垂れる僕の手から、そっとペットボトルを取り上げる。 「……さくら、帰るぞ」 「、ん……」 優しく抱き起こされた僕は、菊地にしっかりと二の腕を摑まれ、支えられる。 ……だけど、まだ足にちゃんと力が入らなくて……蹌踉めいて菊地の胸に縋りつく。 「おい、菊地!」 そんな様子を冷ややかに見ていた深沢が、突然声を上げた。 「……ソイツの太腿に付いてんのは、何だ」 指を差されたのは、僕の腿裏。 足と臀部の境目辺り。 僕を抱き抱えたまま菊地がそこを弄れば…… 「……っ、やぁ、…」 快感が、身体中を走り抜ける。 ずっと欲しかった、刺激。 ガクガクと震えながらも、入らない力で必死にしがみつくも…… 「………あ″ぁ、ん……」 ……だめ……ダメ…… 淫らに漏れてしまう、熱い息。 それでも……まだ僅かに残る冷静な頭で、何とか抗おうと堪える。 やがて何かがピッと剥がされ、菊地が上空でそれをかざした。 「……シール、か?」 二センチ角の透明なそれに、ニコちゃんマークと同じ形の目と口のついた、ポップな赤いハート。 一見すれば、ノート等に貼るただのシール。 「……いや。MD-SS……シートタイプの媚薬だ。 最近、一部のバー店内で密売()られている代物(クスリ)だが、まだそこまで出回ってはいねぇし、知名度も低い。 ……まぁ、媚薬好きの樫井が付けたんだろ。イヤらしく触って、な」 「……クソ」 人差し指の先に付いたそれを、ピンッと弾き飛ばす。 その様子を眺めていた深沢が含んだ様な表情を見せ、軽い口調で菊地に言い放つ。 「慰謝料でも毟り取るか?……愛沢みたいに」 「……やっぱ趣味悪いな、お前」

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