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第200話

「お前だけを狙ってんなら、奇襲でも何でも、直接手ぇ出してくる筈だ。……が、時間を掛けてまでvaɪpər潰しにかかってる。 恐らく、刺客は響平だけじゃねぇ。 お前もろとも、本気でvaɪpər(チーム)を潰す気だ」 「……チッ」 一際大きな舌打ち。 既に黒瞳の奥には邪気を孕み、深い闇と強いオーラを背負ったリーダーの風格を纏っている。 それを確認した菊地が、口元を緩める。 「油断すんなよ。恐らくもう、お前の信頼を得て動き始めている筈だ。 ……身近にいる奴を、あまり信用しすぎんな」 「………ふ、お前もな。菊地」 「ああ」 菊地がソファから立ち上がる。 既に脱力し、意識も殆どなく背もたれにしな垂れる僕の手から、そっとペットボトルを取り上げて。 「……さくら、帰るぞ」 「、ん……」 優しく抱き起こされた僕は、菊地にしっかりと二の腕を摑まれ、身体を支えられる。 ……だけど、まだちゃんと力が入らなくて…… 足元がふらつき、蹌踉めいて……菊地の胸に縋りつく。 「おい、菊地!」 そんな様子を冷ややかに見ていた深沢が、突然声を上げた。 「……ソイツの太腿に付いてんのは、何だ」 指を差されたのは、僕の腿裏。 ショーパンの裾部分──丁度、足と臀部の境目辺り。 僕を抱き抱えたまま、菊地がそこに手をやり、弄れば…… 「……っ、やぁ、…」 快感が、身体中を走り抜ける。 ずっと欲しかった刺激。 ガクガクと全身が震え、入らない力で必死に菊地にしがみつく。 「………あ″ぁ、…ん……」 ……だめ……ダメ…… 淫らに漏れてしまう、熱い吐息。 それでも……まだ僅かに残る冷静な頭で、何とか抗おうと堪える。 ピッ、 やがて何かが剥がされ、菊地が上空でそれをかざす。 「………シール、か?」 二センチ角の透明なそれに、ニコちゃんマークと同じ形の目と口のついた、ポップな赤いハート。 一見すれば、それはノート等に貼るただのシール。 「………いや。 MD-SS──シートタイプの媚薬だ。 最近、一部のバー店内で密売()られている代物(クスリ)だが。まだそこまで出回ってはいねぇし、知名度も低い。 大方、媚薬好きの樫井が付けたんだろ。イヤらしく触って、な」 「……クソ」 人差し指の先に付いたそれを、ピンッと弾き飛ばす。 その様子を眺めていた深沢が含んだ様な表情を見せ、軽い口調で菊地に言い放つ。 「慰謝料でも毟り取るか?……愛沢みたいに」 「……やっぱ趣味悪いな、お前」

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