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第208話

××× 太腿に添えられた指が、スルリと肌の上を滑る。 首を竦め、拒否せずそれを受け入れれば、耳裏にねっとりとした熱い粘膜が這った。 「……くすぐったい」 「くすぐってんだ……」 身を捩って抵抗すれば、その反応に菊地が楽しそうな声を上げる。 耳殻を食まれ、耳のラインを厭らしく舐られてるうちに、首を少しだけ傾げ菊地に身を委ねていた。 クチュ…… 直ぐ近くで聞こえる、卑猥な水音。 柔く吐かれた熱い息が、耳全体を熱いベールのように包み込む。 五十嵐が出て行ってからベッドに横たわった僕は、そのまま眠ってしまったらしい。 それまで、色んな事を考えていた。 ハイジの事。昨日の樫井秀孝の事。深沢の事。……コンクリ事件の事…… そんな夢さえ見た僕の太腿を、帰ってきた菊地がつぅ、と撫でて。 身体が冷えてるからって、一緒にお風呂に入る事になったけど…… 少しぬるめながら、こうして湯船の中で身体を密着させるのは……やっぱり恥ずかしい。 「言っただろ。……クスリが抜けたら、可愛がってやるって」 「………んっ、」 太腿を撫でる手とは反対の手が、僕のウエストラインを擦り上げ、平たい胸を柔く揉んだ後、乳首をきゅっと摘まむ。 腰の辺りに感じる、菊地の硬くなった怒張。それがビクン…と反応し、存在をアピールする。 「……やっ、」 「嫌か?」 「ん……」 手を重ねて菊地の横行をやんわり阻止すれば、動きを止め、残念そうに溜め息と共に手を離す。 「お前の欲しがった顔、また見たかったんだけどな」 「……」 一体、どんな顔だったんだろう。 恥ずかしくなって、折り畳んだ膝を抱えたまま背中を丸め縮こまる。 それを追い掛け菊地が上体を起こせば、浴槽の水面が大きく揺れた。 「お前、昨日の事は何処まで憶えてんだ」 「……」 指に引っ掛けた首輪を持ち上げ、剥き出しになった僕の項に、ふっと吹き掛けられる息。そこに顔を近付けば、悪戯っぽく菊地が舐めてくる。 ピクンッ、と反応を示せば、菊地が楽しそうにそこを指でなぞった。 「深沢に会ったのは、憶えてるか?」 「……、ん」 全身白で固め、サイボーグのような見た目のスネイクリーダー。 ふと思い出されるのは──菊地との会話。カラコンの下に隠れた、猟奇的で尖った瞳。 「前に少し話したよな。深沢の事」 「………うん。少年院を出所した日に、倫さんと一緒に迎えに来た人……って……」 「ああ、そうか。……そういや、それしか話してなかったな」 菊地が仰け反って、浴槽の縁に腕を掛ける。

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