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第209話
「深沢 とは、ガキの頃からの仲だ。幼なじみとか、腐れ縁とか……まぁ、そんな類のやつだ。
……俺らが中学生 の頃は、今とは違ってイキがった悪ガキ共が街に蔓延ってた時代でさ。色んな派閥があってな。ガン飛ばしては殴り合いの喧嘩ばっかでよ……」
懐かしむような、菊地の声。
今とは違うその時代に、遠い世界の出来事を聞いているような錯覚に陥る。
「俺らが高校生になった頃。当時弱小だったチームを、深沢と二人で乗っ取った。
………それが、棲寝威苦 だ」
「……」
「その棲寝威苦 も、喧嘩 重ねる毎にデカくなってよ。一年も経たねぇうちに、知らねぇ奴なんていねぇほど有名な存在 に成り上がってな。
……その頭張ってたのが、俺だ。
顔じゃあ深沢 に負けるが……拳では俺の方が上だったからな」
……そんな事、ない……
振り返って菊地を見上げれば、それを感じ取ったのか菊地の目元口元が緩む。
「……まぁ兎に角、だ。
俺は拳ひとつで相手を捩じ伏せて、チームを引っ張ってきたんだよ」
そう言いながら菊地の片手が伸び、僕の頬を愛おしげに包む。
この手が、沢山の人を暴力で抑えつけて、従えてきたなんて……
そう思うものの、不思議と怖さは感じない。
「当然、俺の方針に不満を持つ奴らがいてな。
──密かに付き合ってた俺の女に、手ぇ出してきやがったんだよ」
何処か遠くを見た菊地の目が、ナイフのように鋭く尖る。
とある日の夜──
女友達に呼び出されて家を出た菊地の彼女は、その友達に連れられて行った小さな公園で……屯していた見知らぬ男性数人に絡まれ、囲まれ取り押さえられて、レイプされた。
その男達は、菊地の彼女を呼び出した女友達の知り合いで、彼女をレイプするよう指示し、予め公園に待機させていたという。
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