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第210話

信じていた友達に裏切られながらも、菊地の彼女は内に秘め、一切誰にも口外しなかった。 ──しかし。その情報は、思わぬ形で菊地の耳に入ったという。 「……レイプ現場にいた野郎が、俺からの報復を恐れて、全部ゲロったんだよ。 自分は頼まれて見張りについただけで、ヤってねぇ。 仕組んだのは全て、女──俺とのタイマンで負けた野郎(アタマ)の、女だってな」 ……そん、な…… 最初からその目的で近付いて……友達になったって事……? それとも……元々友達で。突然、手のひらを返された、って事……? ゾクッと身体が震える。 集団レイプなら、僕にも経験はある。……でも、それは……僕が簡単に騙されたせいで…… 腕をクロスして自分の二の腕をぎゅっと摑む。その様子に察した菊地が、背後から優しく抱いてくれた。 「手を出そうが出すまいが、関わった野郎は全員ヤキを入れた。 ……ただ、主犯だっていう女のやり口には許せねぇもんがあってな。………俺は、同じやり方で報復してやったんだ」 「……」 言いながら、僕を抱く菊地の手に力が籠もる。 女を街で見つけて拉致した菊地は、深沢を含む仲間数人を呼び出し、レイプを命じた。場所は、予め仲間から借りたプレハブ小屋。 拉致された女は、『私もあの時、レイプされた』と泣きながら訴えた。 「あん時はマジでカッとなってたからな。俺は女の言葉を完全に無視して、仲間に輪姦(まわ)させた。 ……でもな。警察(サツ)に捕まった後になって……独居房で冷静になった時…… 思い返せば、女が主犯だったって証拠は何一つねぇ事に気付いたんだ。 ……俺は随分と、告げ口した野郎の言葉を鵜呑みにしてたんだな、ってよ……」 レイプを命じた菊地は、その場を最後まで見届けず。後を深沢に預けて小屋から出た。 当然、事が終われば女を解放するものだと思っていた。実際、そういう報告も受けていた。 しかし、女は拉致監禁されたまま男達の玩具にされ、人間の尊厳を失い、約一ヶ月半もの間……想像を絶する仕打ちを受け続けた。 弱り果てた女の処理に困った男達は、コンクリ詰め事件を引き起こし、逮捕。 彼らの虚偽証言により、主犯格として菊地も逮捕された。

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