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第213話 デート
×××
窓から見える、見事な快晴。
青色を何層も重ねたような、深くて広大な空。
風がカーテンを僅かに揺らし、初夏の爽やかな香りを運ぶ。
ついこの前までは、しとしとと長雨ばかりか続き、ジメジメと湿気を含んだ不快な空気を感じていたのに。
ハイジと再会したあの日から、気付けば二カ月が経とうとしていた。
あれから色んな事がありすぎて……何だかもっと、遠い過去のような気さえする。
アパートの床を水拭きしながら、吹き込んできたのは、五月のカラッとした風。
──あの頃はまさか、自分がこんな風になるなんて、想像もしていなかった。
色んな事が積み重なって、流されるまま、ここまで辿り着いてしまったけど……
でも、この先……僕にとって、避けては通れない大きな問題が待ち構えている。
「……」
殆ど中身のないクローゼットを開け、唯一ある半袖シャツを取り出す。
ショートパンツを履いていると、迎えに来た寛司が玄関のドアを開け、僕を呼んだ。
「……どうした。食わないのか?」
目の前には、お洒落な洋食プレート。
それに手を付けずにいれば、相向かいに座る寛司が声を掛けてきた。
ご飯にハンバーグと目玉焼きが乗り、サラダが添えてある、ロコモコ風のワンプレート。一緒に出てきたカップスープは、もう湯気を失っていた。
ランチ時のカフェレストランは、女性グループやカップルでガヤガヤと賑わっている。
まさか、こんな洒落た店に連れて来られるなんて、思ってもみなくて。……何となく、落ち着かない。
「……倫の店でも良かったが……お前が嫌がるかと思ってな。真木に聞いて、この店にしたが……」
言いながら、寛司がぐるっと店内を見回す。
入口付近のテーブル席よりも奥まった場所にある、フローリングの座敷。
敷居もパーテーションもなく、間仕切り代わりになっているのは、壁際に置かれた少し背丈のある、観葉植物ぐらい。
座席には、マシュマロクッション。ローテーブルの横にある籐の籠には、フリース素材の膝掛け。
寛げるグッズのお陰で、居心地はいい。隣の声や席の近さが気にならなければ……だけど。
「……落ち着かねぇな……」
うん……それは、僕も思った。
「……場所、変えるか?」
半分程平らげたランチプレートを残し、寛司が伝票に手を伸ばす。
「あ……」
確かにここは落ち着かない。でもわざわざ場所を変えて貰うには、気が引けた。
……今日のデートの為に、わざわざリサーチしてくれたのだから。
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