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第219話

購入した商品を袋詰めして貰っている間、寛司の携帯が鳴った。 その瞬間、緊迫した空気に変わる。 携帯を耳に当てながら、店の外へと向かう寛司。 それを目で見送れば、間接視野に映る店員が、作業をしながらボソリと呟く。 「……なんか寛司さん、スゲェいい顔してる」 「え……」 いきなりのタメ語。 ……じゃないのか。どう見ても僕の方が年下だし。 「やっぱ、君の影響のせいかも」 「……」 「ロリコンだったって所は、さすがに引いたけどね」 ストレートな物言い。 軽い口調だし、冗談っぼさは感じるものの……実際、中学生の僕と肉体関係があるから、否定はできないし間違ってもいないのかも…… 「……あ、性的マイノリティは俺、全然理解してる方だから!」 「……」 どう反応していいか解らなくて、店員に視線を移した後も無言を貫く。 それに気付いたのか。店員が顔を上げ、変わらない純な笑顔を僕に見せる。 「いい人だよ、寛司さん。 色んな悪い噂もあるけどさ。……俺はそんなん信じてねぇし。なんなら、己の直感信じてるし!」 商品の入った袋の両端を持ち、僕に差し出す。 レジカウンターに近付いて片手で受け取れば、自信に満ち溢れてキラキラと輝いていた彼の瞳が少しだけ曇り、僅かに揺れた。 「実は俺、半年前まで、vaɪpərの麻薬密売……売り子、やってたんだよね」 そう言った彼が、吹っ切れた顔つきで言葉を続ける。 「先輩から預かったクスリを、クラブの常連客とか交遊関係者とかに当たって、新規客どんどん増やして、どんどん売り捌いて。 ……そん時は、特にやりたい事もなかったし。楽に稼げて、毎日楽しく暮らしていければ別に良いんじゃね? 的なノリで生きてて。 だから、買った相手が(ヤク)漬けんなって捕まろうが、廃人になろうが、最悪死のうが……、別にソイツが自分で決めた先の結果だし。 自己責任、っつーの? どうなろうが俺には知ったこっちゃねぇって、冷めた目で見てた。……あん時はマジで腐ってたな、俺。 でもさ。 こんな腐りきった俺にも、見つかる時は見つかるんだよな。……夢ってヤツが。 したら今度は、売り子してんのがその足枷みたいになっちゃってさ。 ………凄ぇ、後悔した」 「……」 「売り子を抜けて。夢だった自分()の店持って。オープンまで漕ぎ着けた矢先に、……先輩に見つかっ(バレ)てさ。 そこの道の真ん中に引き摺り出されて、客や通行人の目の前で、フルボッコ。 ……で、偶然通りかかった寛司さんに、俺、助けられたんっす」 店員が、通りを向いて電話する寛司の背中を眺める。

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