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第242話

首元に触れていた寛司の手が、僕の後頭部へと移動し、優しく包む。 クイッと引き寄せられ、寛司の肩口に顔を埋めれば、僕をあやすかのように背中をトントンされた。 「──死なねぇよ」 手のひらをしっかりと背中に当て、僕をギュッと抱き締める。 耳元で感じる、穏やかな溜め息。 僕を、落ち着かせようとしたんだろう。 ……でも僕には、気休めにしか聞こえない。 『お前に殺されるまではな』──そんな言葉が含んでいるような気がして。 「……ずっと、寛司の傍にいたい」 脇に差し込んだ腕を背中に回し、ギュッとしがみつく。 そして、鼻先を寛司の首筋に擦り付け、スンと匂いを嗅げば……切ない程に、愛おしさが胸に込み上げて…… 「捨てる位なら……僕を殺して──」 指先に力を込め、服地を掴む。 もう二度と、離したくない。 「………なら、一緒に死ぬか」 返ってきたのは、思ってもみない反応だった。 『何馬鹿な事言ってんだ』──そう言って、髪をくしゃりとされるものだと思っていたから。 穏やかながら、まだ少し憂いを帯びた吐息が頭上で聞こえる。 でも、何もかもを諦められるよりは、全然いい。 ──一緒なら、死ぬのだって怖くない。 「うん。……約束、だよ」

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