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第248話

部屋に戻って、ベッドに潜り込む。 疲れた身体を預け、横向きのまま膝を抱くようにして丸くなる。 サイドテーブルの上には、無造作に置かれたビニール袋。品のいい、倫の店の赤いロゴマーク入り。 寛司が帰ってきてこれを見たら……どんな反応をするだろう。 驚くだろうな。 ……喜ぶかな。 それとも、一人で勝手に動いて、寛司の許可無く決めちゃって……怒られるかな。 それとも──倫と会った事を、快く思わない、かな…… 期待と不安に満ちた、妙な高揚感を抱えたまま、ケットを引っ張り上げて首元まで被る。 ″もし、元彼が寄りを戻そうと迫ってきたら……″ あの時、直ぐには答えられなかった。 今の僕には、寛司は大切な人で。それは揺るぎないもの、だけど…… ……でも、竜一を好きな気持ちは変わらない。嫌いになんか、なれない。 もし迫られて、拒絶したとしても……心が一ミリも揺れ動かない自信なんて、ない…… 「……」 寛司も、そうなのかな…… 寛司の中で、亡くなった彼女は絶対的な存在で。……倫の言う通り、越える事はできないのかもしれない。 今まで特定の恋人を作ったとしても、それはお互いに割り切った関係で。とてもラフなものだったんだろう。 「……」 ……でも。だったらどうして。 僕にだけは、そうじゃなかったんだろう…… 瞼が重くなり、重力に任せて瞳を閉じる。 息を吐く度に、ベッドに身体が沈み込んでいく感覚に襲われた。 ──それにしても。 真木の車の中は、異様な盛り上がりだった。 まだあの騒がしい音が、耳にこびり付いて離れない。僕の隣に座っていたのは、虫も殺せぬ様な大人しい顔をした男で。真木や愁が悪ノリして絡む度に、引き攣った笑顔で、イエスとしか答えていなかった。 多分、彼が受け子役だったんだろう。 幼顔にリクルートスーツは、服に着られているようで似合わなかった。彼はお金の為にしているというより、虐めにでも遭って、やらされている感が否めない。 こんな子まで食い物にする、半グレ詐欺集団。 以前、寛司に聞いた事がある。 どうしてこんな、詐欺行為を続けるのか。

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