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第255話

クシャ…… 反射的に動いた指が、手中の紙切れを一瞬握り、小さな音を立てる。 ──まさか、この遺書。 寛司が書いたものなんかじゃなくて……殺した奴が書いた……偽物……? 「もし家に帰りたくねーならさ。……俺ん所に来いよ」 一際浮かれる愁が、何の躊躇もなく僕に密着してくる。ヘラヘラとした顔を近付け、強引に僕の肩に腕を回して。 ルームミラー越しに、真木がチラリと此方を見たけど、特に咎める気はないらしい。 ……当たり前だ。 僕がどうなったって、もう関係ないんだ。庇う義理はない。 「……それでさぁ……俺と毎日、気持ちいい事しようぜ……」 「……」 耳元で熱く囁き、もう片方の手で剥き出しになった僕の太腿に指を這わせる。 ニーハイソックスに阻まれ、邪魔だとばかりに摺り下げながら。 それを黙って放っておけば、遠慮無く僕の首筋に顔を埋め、チュッ、チュッ、とリップ音を立てながら愁が啄む。興奮した息を肌に吐き付け、肩に回した腕で僕の身体をグッと引き寄せながら、内腿に指を差し込み、付け根の柔らかい部分をイヤらしく揉みしだく。 「……」 異変に気付いた五十嵐が首を捻り、窓側からチラリと僕を覗き見る。 申し訳なさそうに下げた眉尻。可哀想な目で僕を見るその態度に、苛立ちが隠せない。 これは、お前が望んだ結果だろ……? 横目で睨み返せば、五十嵐はそそくさと顔を元に戻す。 何も見てはいない。知らぬ存ぜぬ。我関せず。……さすが、五十嵐。 「……ああ、この匂い……堪んねぇ……」 内腿を弄る手が離れ、シャツの裾から侵入し、スルリと僕の肌を滑り上げる。指先が乳首を捕らえれば、二本の指でキュッと挟み、引っ張ってピンと弾く。 顔を僕の首筋に埋めたまま、愁の唇が何度もそこに舌を這わせ、柔らかく食んだ。 「もう、我慢できねーよ。……しようぜ。ここで……」 「……」 「──なぁ、いいだろ。真木」 ニヤついた顔を、運転する真木に向ける。 公開レイプの許可を、僕ではなく真木に委ねるという、何ともおかしな構図。 「………好きにしろ」 少し呆れた目をした真木が、愁にそう吐き捨てる。 待ってましたとばかりにシートを倒し、上向いた僕に覆い被さるようにして、愁が跨ぐ。 口の片端を持ち上げた、厭らしい顔付き。僕の顎下に手を差し込み、荒い息を吐きながらその唇を近付けた、──時だった。

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