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第257話
……逢いたい……
寛司に、逢いたい……
逢って、抱き合って、キスしたい。
寛司が僕を見る瞳──触れる手、重なる唇、重ねる肌。
交わる吐息。
匂い……
寛司から与えられる熱や温もりは、優しくて……
温かくて……心地良くて。
いつまでもそこに、溺れていたかった。
もっと僕に、溺れて欲しかった。
支えたかった。
助けたかった。
……もっと、傍にいて欲しかった……
もっと……生きて……
「………降りろ、愁 」
「……」
何の抵抗もみせず、僕の上から愁がゆっくりと退く。
「お前とは、ここでお別れだ。
棲寝威苦 に戻るなり、一人でカップル狩りするなり──好きにしろ」
真木の言葉に、今まで押し黙っていた愁がチッと舌打ちする。
「……いいのかよ。俺が棲寝威苦 に戻ったら、お前が菊地を殺す計画をしていた事、全部───」
「言いたきゃ言え。……俺と心中したきゃぁな……」
真木の、冷ややかな目。
その瞳は、上に立つ者として制するものなんかではなく……愁を人として見下し、蔑んだもののように僕の目に映る。
もしかしたら真木は、最初から愁の性格、素行の悪さ、考え方、……愁自身の何から何までを、快く思っていなかったんじゃないか。
ただ、同じチームという繫がりだけで。
『コイツ、凄ぇバカでさぁ……』
呆れながらも、そうフォローする真木は、当初、面倒見のいい兄貴という印象だった。
二人の仲の良さも、垣間見えた。
だから……全てがそうだとは言い切れないのかもしれない。
……けど、根底ではずっと疎ましさと感じ、黒い感情を抱いていたのかもしれない。
「……まてよ、真木」
「……」
「俺、真木とはまだ……一緒にバカやっていてぇよ。……真木がいなくなったら、俺……バカだし、生きていけねぇ」
愁の眉が下がり、下手に出て必死に訴える。
「何処までもついていくから。
……連れてってくれよ。俺をここに置いていくなんて、言うなよ……」
「……」
「……なぁ、真木……」
それでも真木は、その瞳の色を一切変える事はしなかった。
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