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第274話
湯を張った浴槽に足を入れる。
一人の時は、シャワーで済ませてばかりだったから……こうしてゆっくり湯船に浸かるなんて、本当に久しぶり。
でも、だからこそ。僕はもう一人ぼっちなんだなって……嫌でも思い知らされる。
「……」
募っていく、寛司のいない淋しさ。
目を瞑り、僅かに揺れる水面を感じていれば、次第に背後から、ふわりと僕を包み込むような気配を感じて……
……あ……
僕の肩を抱く腕……密着する身体……
耳元で囁く、優しい声……
『……さくら』
……ん、
お腹に回された手。
その指の腹がゆっくり、僕の身体を弄びながら滑り上がり……
『……可愛いな』
……あぁ……
ピンク色の、小さな突起。
そこをキュッと摘ままれ、引っ張られ……そうされながら、吐息で熱くなっていく項に顔を埋められて……
『……愛してる、さくら』
──かん、じ……
胸の奥が、甘く疼いて
切なく震えて
泉の様に止め処なく溢れてくるこの感情を、抑えきれない。
僕も、……僕もだよ……
……愛してる……愛してる……愛してる……
だから、寛司……お願い……
僕も……連れてって……
傍に置いてよ……
僕を……寛司の、傍に……
頬に伝う涙が、揺れる水面に零れ……小さな波紋を作る。
「……ぁ、……っん……」
淋しさと宿った熱のせいで身体が疼き、びくんっと戦慄く。
自分でもよく解らない感情の渦に巻き込まれ……自身のモノに触れ、寛司にされたように弄る。
「………ん、ぅ……、」
そうしてキュッと握っていれば、その手の甲に、寛司の手が重なって……
『………して……いいか……?』
遠慮がちに囁かれる声。
甘い吐息が、項にかかって擽ったい。
うん……
……いいよ……シて……
僕を、めちゃくちゃに……抱いて……
……寛司で僕の中を、いっぱいに……して……!
「──っ!」
こんなの……
こんなの、間違ってる。
冷静な僕が、頭の中で警鐘を鳴らす。
……それでも、止められない。
僕の身体に刻み込まれた寛司の温もりを……もう、追い掛けずにはいられない──
「……あぁぁあ、っ………、」
……だけど……
虚しさばかりが募り、後から後から淋しさが襲いかかる。
片手でグイと拭ぐう涙。
ぽっかりと空いた心の空洞。
追い掛けてもその存在を確かめるだけで……満たされないと思い知らされる。
「……は、ぁ……あぁ″……ん……」
……いやだ……
連れてってよ……寛司……
僕を、置いていかないで……
……僕を……
一人にしないで──
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