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第279話 訪問者

××× ガチャンッ……! 重厚な金属のドアが締まる音が、静寂した部屋に鳴り響く。 その音で、海よりも深い幻夢の世界から微睡みへと意識が浮上する。 何処かへ出掛けたのか。 それとも、何処かから帰って来たのか…… その微睡んだ世界でぼんやりと頭を働かせていれば、遠くから室内を彷徨(うろつ)く足音が聞こえた。 ……ああ、帰ってきたんだ…… 何となく状況が掴めてホッとし、打ち寄せてくる眠気に身を任せれば……再び深い夢幻の世界へと意識が沈められていく。 ヒタ……ヒタ…… 近付いてくる足音。それがベッド脇でピタリと止まった。 パサッ…… 突然掛け布団を足元まで剥がされ、空調の効いた空気に身体が曝される。 ぶるっ、と震え膝を折り曲げ、身を縮めた──時だった。 「………っ、!」 下着の腰ゴムに手を掛けられたと同時に、乱雑にズルリと脱がされる。必然的に持ち上げられる両足。脱力したその両膝をそのまま掴まれ、強引に左右に割り開かれて……… ──え 微睡みから目が覚めた頃にはもう、遅かった。 ……はぁ、はぁ…… 僕にのし掛かる、黒い影。 フードを頭から深く被った男が上から覗き込み、涎を吐く男の切っ先が、僕の後孔に宛がわれて…… ……ふぅ、ふぅ…… 「──っ!!」 何の準備もされていないソコに、容赦なく打ち込まれる──男の楔。 メリメリと恥肉が割り裂かれ、入口にピリッと鋭い痛みが走る。 「………ぅ″ぁあ、あ″ぁ……ぁ、……」 容赦なく繰り返される抽送。 痛みで理性が焼き切れ、本能のまま叫ぶ。 ──痛い、痛い、痛い……! 浅く息を吐くばかりで、苦しい…… 呼吸が……できない…… 「……っ、い″、……!」 深く打ち込まれ、脳天まで突き抜ける──鋭い痛み。 その痛みに耐えながらも必死で手を伸ばし、男の腕を掴む。 ……けど、それを押し返す力なんか、当然なくて…… ……ズッ、ズッ、ズッ…… 滑りの悪いそこを何度も強く擦られ、時折深い所を容赦なく突かれ……その度に、痛みと恐怖で意識が飛びそうになる。 ──痛っ、……いぁ、あ、ぁ…あ″……… ぎゅっと目を閉じ、何とか痛みを逃そうと……浅い呼吸を必死で何度も繰り返す。 ……だけど、苦しくて。 酸欠状態になったみたいに、頭がじりじりと痺れ……脳内が次第に真っ白になっていく。 それでも──何とか抵抗しようと力を込め……押し返そうとする。 こうなってしまったら……もう、どうにもならない…… そんな事ぐらい、解ってる。 ……解ってる、けど…… はっ、はっ、はっ── フードの奥から聞こえる、無感情な呼吸音。 雰囲気。体つき。匂い。……どれを取っても、五十嵐じゃない事だけは解る。 ……助けて。 誰だか解らない──恐怖と痛みに、身体が大きく震えた。

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