282 / 558
第279話 訪問者
×××
ガチャンッ……!
重厚な金属のドアが締まる音が、静寂した部屋に鳴り響く。
その音で、海よりも深い幻夢の世界から微睡みへと意識が浮上する。
何処かへ出掛けたのか。
それとも、何処かから帰って来たのか……
その微睡んだ世界でぼんやりと頭を働かせていれば、遠くから室内を彷徨 く足音が聞こえた。
……ああ、帰ってきたんだ……
何となく状況が掴めてホッとし、打ち寄せてくる眠気に身を任せれば……再び深い夢幻の世界へと意識が沈められていく。
ヒタ……ヒタ……
近付いてくる足音。それがベッド脇でピタリと止まった。
パサッ……
突然掛け布団を足元まで剥がされ、空調の効いた空気に身体が曝される。
ぶるっ、と震え膝を折り曲げ、身を縮めた──時だった。
「………っ、!」
下着の腰ゴムに手を掛けられたと同時に、乱雑にズルリと脱がされる。必然的に持ち上げられる両足。脱力したその両膝をそのまま掴まれ、強引に左右に割り開かれて………
──え
微睡みから目が覚めた頃にはもう、遅かった。
……はぁ、はぁ……
僕にのし掛かる、黒い影。
フードを頭から深く被った男が上から覗き込み、涎を吐く男の切っ先が、僕の後孔に宛がわれて……
……ふぅ、ふぅ……
「──っ!!」
何の準備もされていないソコに、容赦なく打ち込まれる──男の楔。
メリメリと恥肉が割り裂かれ、入口にピリッと鋭い痛みが走る。
「………ぅ″ぁあ、あ″ぁ……ぁ、……」
容赦なく繰り返される抽送。
痛みで理性が焼き切れ、本能のまま叫ぶ。
──痛い、痛い、痛い……!
浅く息を吐くばかりで、苦しい……
呼吸が……できない……
「……っ、い″、……!」
深く打ち込まれ、脳天まで突き抜ける──鋭い痛み。
その痛みに耐えながらも必死で手を伸ばし、男の腕を掴む。
……けど、それを押し返す力なんか、当然なくて……
……ズッ、ズッ、ズッ……
滑りの悪いそこを何度も強く擦られ、時折深い所を容赦なく突かれ……その度に、痛みと恐怖で意識が飛びそうになる。
──痛っ、……いぁ、あ、ぁ…あ″………
ぎゅっと目を閉じ、何とか痛みを逃そうと……浅い呼吸を必死で何度も繰り返す。
……だけど、苦しくて。
酸欠状態になったみたいに、頭がじりじりと痺れ……脳内が次第に真っ白になっていく。
それでも──何とか抵抗しようと力を込め……押し返そうとする。
こうなってしまったら……もう、どうにもならない……
そんな事ぐらい、解ってる。
……解ってる、けど……
はっ、はっ、はっ──
フードの奥から聞こえる、無感情な呼吸音。
雰囲気。体つき。匂い。……どれを取っても、五十嵐じゃない事だけは解る。
……助けて。
誰だか解らない──恐怖と痛みに、身体が大きく震えた。
ともだちにシェアしよう!