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第280話
──パンッ、パンッ、パンッ、
激しさを増す律動。
上下に大きく揺さぶられる身体。
突き上げられる度、内臓を串刺しにされるような衝撃と痛みに襲われ……
次第に意識が混沌とし……脳内が麻痺していく──
……は、は、は、
もう殆ど感じない、痛みや手足の痺れ。
代わりに強くなっていく──吐き気と寒気。
時折、鋭い痛みが腹の奥から脳天にまで突き抜け、その度に手放そうとする意識を、次に襲う痛みで簡単に引き戻されて……
………苦しい……助けて……
助け、て……五十嵐……
瞼を上げたまま、二人掛けソファの方へと黒目を動かす。
しかしそこに、頼みの綱である五十嵐の姿は無かった。
………な、んで……
雑に丸められた薄手のケットが、背もたれに掛かっている。
それを、力無く……上擦った胸式呼吸を繰り返しながら、眺めるしかなかった。
涙で滲む視界。絶望のまま──揺さぶられながら……
今のこの状況──考えられるのは、一つしかない。
五十嵐が部屋を出て行く時に、鍵を閉め忘れた所をつけ狙われたんだろう……
非力ながら、男の腕に爪を立てて抵抗する。……だけど、それすら興奮材料になってしまったらしい。
一瞬止まった腰の動きが再び速まり、肉を打ち付ける鈍い音と男の荒々しい息遣いが強くなり、麻痺した意識の中でやけに耳について離れない。
──ズンッ!
律動の末、奥深い部分を強く突かれ……その状態で、更に奥へと押し込むように、二度程腰を大きくうねらせる。
ドクドクドクッ、……
腸内 で脈動する剛直。
その先端から欲望が迸り、下腹部が熱く滲み広がっていく──
「………」
絶望……しかない。
こんな、得体の知れない侵入者に……良いようにされて。
切れてひりつく喉。
首を絞められた時みたいに、張り付いて呼吸も上手く出来ない。
その奥から僅かに漏れる、奇妙な嗚咽。
………はぁ、はぁ、はぁ、
欲望を吐ききった男が、荒々しい呼吸を繰り返す。
次第に萎んでいく肉茎。引き抜きもせず、大きく肩で息をしながら男が僕を見下ろす。
殆ど光のない暗い部屋。
鼻先から上の部分がフードの影に覆われ、未だにどんな顔をしているのか解らない。
その男の顔が、ゆっくりと近付く。
カーテンから僅かに溢れる光を取り込み、鈍く光る無機質なアクリルボールのような二つの瞳が姿を現す。
片端を吊り上げた薄い唇が寄せられ、僕の唇をスッと狙う。しかし、フードの先が僕の前髪に当たって形を変えた途端、触れる寸前で止まった。
「……」
それを邪魔だとばかりに片手で取り払えば──僕を襲った男の全貌が明らかになり……
「………ぇ……」
思わず、声が漏れた。
余りに信じられなくて、持ち上げた瞼が更に大きく開かれていくのを止められない。
───モル……?!
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