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第283話
「それを棲寝威苦 に拾われて、居場所を見つけ、……やっと自由に生きられると思っていたのに。
……結局は『拷問の道具』として利用される毎日……」
麗夜の言葉に反応し、蕾がビクッと反応する。
甘えているのか……鼻先を少し上げ、麗夜へと顔を向けた後、首を傾げて頭の天辺を差し出す。もっと撫でてと、催促するように。
「……」
「解ったなら、その靴下と首輪……早く外しな」
蕾の要望通り、麗夜の手が頭の天辺に置かれる。
くしゃくしゃと掻き混ぜられれば、モルによく似た赤い髪の毛先が柔らかく揺れた。
ゆっくりと横向きになり、痺れて痙攣する腕に力を入れて上体を起こす。
お腹に力が入る度、ナカに溜まっていた精液がトロッと溢れ、肌やシーツを容赦なく汚す。
膝を曲げた時に付着してしまった、ニーハイソックス。それを、親指で引っ掛け足首まで下ろす。感覚の殆どない指先。
なのに……まだびりびりと痺れて、震えてる……
「……」
慣れる訳がない。
もう何度か、レイプされた経験はあるけれど……
その度に傷付き、壊される。
身も心も。
だけど、蕾は──望んでやった訳じゃない。
欲を満たす為とか、誰かを犯して傷付けたい訳でもないのに、そうせざるを得ないのは……加害者であって、真の加害者じゃ……ないのかも──
性に翻弄されるのは、……虚しくて悲しい。
蕾の立場は、とても難しい。被害に遭う僕よりも理解されず……ずっと、苦しんできたのかもしれない──
そう、自分に言い聞かせる。
そうでもしないと、突然切り裂かれた精神が持ちそうにないから。
足先から外れた、黒のニーハイソックス。それをやるせない気持ちも一緒に、闇に向かって放り投げた。
「………あの、」
首輪に両手の指を掛け、視界に入れないまま麗夜に声を掛ける。
「これは……付けてたら、駄目……ですか……?」
「……」
「外す鍵を、持って無くて……」
なら、切ればいい──そう言われてしまえばそれまでだ。
だけどこれは、外したくない。
ハイジが僕に残してくれた、唯一無二のものだから。
「……蕾に見えないようにするなら、別にいいんじゃない」
答えながら、口の片端がクッと吊り上がる。
「──それにしても。
店のバックヤードで会った時と、随分イメージが違うな。
あの時の君なら、蕾に襲われても上手く立ち回れて、直ぐに手懐けられると思ったんだけどなぁ。
──ねぇ、五十嵐くん」
麗夜が、背後にあるドアへと大きく振り返る。
つられて僕も、目線を其方に向ければ……
「………」
暗闇の中で分が悪そうに立ち尽くす、五十嵐の姿が。
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