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第288話 堕ちる
×××
ギシ、ギシ、ギシ、
先程まで乱暴に扱われていた窄みに、太くて熱いモノが押し込められる。
遠慮がちながら、無遠慮な律動。それと連動するベッド軋み。シーツの擦れる音。
僕の両手首を縫い付けた手の指先が、じりじりと這い上がり……柔く握った僕の指を解きほぐし、交差させ、汗ばむ手の平を重ね──
「……ごめん、工藤……」
耳元に寄せられた五十嵐の唇から、吐息混じりの声が漏れれば、否応なしに外耳を擽られる。
その耳下辺りに唇がそっと触れ、直ぐに熱い舌が這い、柔く歯を立てられ……
「……、っ」
「……ごめ……ん……、……」
苦しそうに呻きながら、付いた歯形を確かめるように舌先でなぞられる。
間近で僕を覗く瞳には、憂いながらもしっかりと熱情を孕んでいて……
「……」
仕方なく、なんだよね……
五十嵐は男の僕に、そういう目で見た事なんてない筈。
それに、今までだって……僕に好意的に接してきたのは、妹を守る為であって僕の為じゃない。
僕の知ってる五十嵐は、本当の五十嵐じゃない。僕を騙す為に嘘で塗り固めた、偽物の姿なんだから。
だったら、今更……謝られても困る。
偽善者ぶって、こんな……償うみたいな優しい抱き方されても、迷惑だ。
「……っ、」
甘噛みされた首筋から、無情にも甘い痺れがぴりぴりと広がる。
腸壁 を擦り上げる度に質量と硬度が増し、反り上がって存在を主張する。
それを逃したくないと……僕の意思とは関係なしに、吸い付いて離さない。
寛司との性行為を重ねるうち、次第に開花されてしまったこの身体は、優しくされればされる程簡単に快感を引き出し──相手が誰であろうと、構わず素直に反応を示してしまう。
……それが、堪らなく嫌だ……
「……」
「………はぁ、……ごめ、ん……」
言葉とは裏腹に、激しくなる五十嵐のピストン。
重ねた手が離れ、擦れて捲れたシャツの中にその手が滑り込む。
胸の膨らみを求めていたのか。弄る手つきが一瞬戸惑い、直ぐに胸の平たさをゆっくりと確かめる。そして見つけた小さな胸の尖りを、徐に摘まんだ。
ギシ、ギシ、ギシ……
……はぁっ、はっ、はぁ、……
閉じた瞼から透けて通る電光。
柔く瞼を開ければ、五十嵐の肩越しから天井の照明器具が視界に映る。
五十嵐が上下に揺れる度にそれが見え隠れし、僕の顔に落とす影の濃度や形を微妙に変える。
同級生とは思えない、男らしい体つき。
光の下、陰影がつき浮き彫りになる、締まった筋肉。
揺れる度に輝く──ゴールドのネックレス。
「……」
ゆっくりと瞬きをしながら、視線を横にずらす。
そこに映ったのは……ハンディカメラを構え、無機質なレンズを此方に向ける、八雲の姿。
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