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第301話
遺体は、真木達のチームと共に処理された。
ザァァ──ッ
酷い土砂降りの中、真木の車で山林を走り、道なき道を真っ直ぐ突き進む。僅かに開けた場所。そこに車を停め、ヘッドライトの光が指し示す木々の間まで、雨合羽に長靴姿の五人がショベルを肩に担いで歩く。
どろどろに泥濘んだ足元。降雨に溶け崩れる盛り土。泥水に塗れるそこを只管に掘り続けるも、雨を含んだ土は重く作業は難航した。
その様子を、少し離れた場所から真木がカメラを回す。
『……お前、菊地さんが憎いと思うか?』
トランクから下ろしてきた遺体を、愉快げに穴へと蹴り落とす愁。それを背後で眺めながら……八雲が五十嵐に、耳打ちする。
『ここを無事に抜けたかったら、これから俺の言う通りにしろ』
「──酷い雨の夜だった。
もしかしたらこれは、最初から仕組まれていたのかもしれない。
掛け子の仕事をした時から。八雲さんを紹介された時から。親父を暴行した時から。
……いや、親父の子に産まれた時から。
どうしようもなく、逃れようもない運命だったのかもしれないな……」
「……」
この一件で、五十嵐は周囲から一目置かれる存在となった。
と同時に、この裏社会 に身を沈めるしか、もう道は無かった。
「俺の両手が血で真っ赤に染まる夢を、何度も何度も見た。
先輩の、変わり果てた姿──俺を助けようとした先輩を、この手で殴り殺してしまったんだ。
許せなかった。総括を強いる菊地を。
だけどそれ以上に……俺自身が許せなかった……!」
「……」
苦しそうな息遣い。
それを聞いているうちに、胃の辺りがじくじくと痛む。
『話してみないと解らない事ってあるんだな』──初めてアジトで会った時、五十嵐がそう言っていたのを思い出す。
「『菊地殺害計画』──そう聞かされた時、身震いしたよ。
………もう、人を殺すのは嫌だ。
だけど、殺らなきゃいつか、俺が消される……
……妹が、危険な目に遭ってしまう」
五十嵐の答えは、自ずと決まっていた。表の世界に一人残してきた、妹を思えば。
「幸い俺は、あの一件以降、菊地さんに目を掛けられた。
菊地さんの身の回りの世話をしながら、箱長としての仕事も教わり……留守の間を任されるまでになった」
それと同時に、八雲からの指示で菊地に関する全ての情報を集めていた。
菊地の部屋を清掃しながら、各所に盗聴器を仕掛け……菊地が帰宅してから眠りにつくまで、音を拾って記録する。
「……棲寝威苦 リーダーの紹介で来たというデリヘル嬢と、夜通しって日もあった。
水商売の相手とはいえ、彼女の悲痛な叫びを聞いた時は………流石に、キツかったな……」
「……」
それ……前に、五十嵐が言ってた……
胸の奥が、ちくんと痛む。
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