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第302話

それから暫くして、菊地に宛がう女が来ると八雲から聞かされた。当然、その女性はその道のプロで、気の強い、派手な美人が来るものだとばかり思っていた。 『お前、そいつの同級生になりきって、仲良くなっておけ』 同級生──その台詞に引っ掛かるものがあったが、八雲の指示に従うべく、渡された資料に目を通す。 それは、若干14歳の少年。 大人の女性だとばかり思っていた五十嵐は、その事実に衝撃を受けた。 添付の写真を見れば、女の子と見紛う程の可愛らしい容姿。写真からでも伝わってくる、妙な色気。隠し撮りされたのだろう。カメラに気付かず、自然な表情を浮かべる少年は、この汚れた世界を知らない、無垢そのものに見えた。 「………だけど、工藤の姿を目の当たりにした時は……絶句した」 痩せ細った身体。手首に残る痣や傷跡。 虚ろげな表情。全てを諦めきった、冷めた瞳── 案内した菊地の部屋のベッドに、力無く横たえるさくら。その手足や顔には、殴られたような腫れや痕。鎖骨には幾つもの鬱血痕。首輪の奥に秘めた細い首筋には、青紫の索状痕。 なのに──こんな姿になってまで、男を誘うような色気を醸し出し、噎せ返る程に匂い立つ、男の色欲を刺激するような甘い香りを放っていて── 一体、誰がこんな…… 手を挙げ、力尽くで拘束し、首を絞めながら欲望を満たしたんだろう──想像しただけで、吐き気がした。 こんな小さな身体で、これからあの性欲モンスターに夜通し抱かれるのかと思うと……胸の奥がざらつき、何ともいえない気持ちが襲う。 「………妹に、似てると思ったんだ。 あの時の工藤が。親父にヤられた時の……妹に……」 「……」 「だけど一方で俺は、ベッドの上で工藤に挑発されて……情けないけど、反応してしまったんだ…… 妹を犯し続けた親父みたいに俺は、俺の身体は──工藤をこの手でどうにかしたくなって、堪らなくなってた……」 五十嵐の声が、震え掠れる。 苦しそうに口呼吸を何度も繰り返し、小さく呻く。 それに共鳴したのか。静かに聞いていた蕾の息も乱れ始め、片膝を抱えたまま親指の爪を囓り出す。

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