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第313話

『………どうして菊地さんが殺されたのか。その理由は知りたくないんだね?』 意地悪気に吐かれたその言葉に、息を飲む。 無言のままじっと吉岡の背後を見つめていれば、ドアノブに掛けた手がスッと外される。 『姫が世話になっていた凌の事は、良く知ってるよね。その凌が、太田組と繋がりのあるvaɪpər(ヴァイパー)に殺された事も』 『……』 『それを知った凌の兄貴分である八雲が俺に近付き、凌を殺したvaɪpər(組織)のリーダーに報復したいと、この計画を持ち掛けてきたんだよ』 そう言い切ると、吉岡が振り返って僕を斜めに見る。 やはり、親切に教える振りをして、僕の反応を楽しんでいたんだろう。鋭い目付きのまま顔を歪め、不気味な笑みを漏らしている。 『俺は、太田組組長の息子だからね。ちょっと調べれば、真のリーダーが誰かなんて容易に解るし、八雲を菊地の傍に送り込む事だって出来るんだよ』 『……』 『まぁ、菊地はクズな性欲モンスターだから……別に世の中から居なくなったって誰も悲しまないし、vaɪpər(ヴァイパー)のリーダーなら表に立ってる奴(お飾り)がちゃんといるんだから……何の問題もないよね、姫』 『……』 顔を歪めたままそう言い切ると、大人しくしている僕の表情を食い入るように見る。 寛司を悪く言われて腹が立ったものの……性欲モンスターと言われていたのは本当だし、アトピーの痒みを和らげる為とはいえ、色んな女性と寝ていたのは確かだから…… 嫌悪感を剥き出しにしたり、言い返した所でやり合う気力なんて無く……ただ静かに、吉岡を見つめ返していた。 それがとてもつまらなく、不愉快だったんだろう。 僕からスッと目を逸らすと、乱暴にドアノブに手を掛け、部屋から出て行った。 「……」 何で突然、僕に教える気になったのかは解らない。 自分が八雲よりも上の人間だと誇示したかったのか。それとも。単に、竜一のオンナだった僕を、何処までも痛めつけたかっただけなのか──

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