315 / 558
第312話
それでも。
八雲と吉岡の繋がりは解った。
だけど、どうして吉岡は八雲に協力する気になったんだろう……
性欲モンスターに僕を宛ったら面白い、とか思ったんだろうか。
八雲の目的が寛司殺害だとしたら──『次の目的』は、恐らく吉岡のだろう。
今までのように、僕を性の捌け口として誰かの所に送りつけようとでもしているのかもしれない。
このまま、吉岡の手中に囚われている限り……僕は死ぬまで同じ事を繰り返す。
吉岡の勝手に振り回される。
「……」
……だったら、逃げなくちゃ。
誰かのオンナにされる前に……
しん、と静まり返った部屋。
辺りを見回せば、見張りに立てている人影は見当たらない。
この、左腕に刺さってる針を抜き、自力で部屋を出て行けばいい。
……ふぅ
大きく深呼吸をひとつして、まだ痺れている右手を動かす。
掛け布団の上──僕の腹の上をゆっくりと通り、左腕の内側を指先で触れてみる。
そこにあるだろう包帯の巻き終わりを探り、止められたテープの端を爪先で剥がす。
「……」
……でも……
不安に駆られ、心にぼっかりと空く穴。
そこから広がっていく、深い闇、闇、闇──。
ここを上手く抜け出せた所で、僕に行く宛なんてあるんだろうか。
唯一頼りにしていた麗夜には、見事に裏切られた。アゲハの居場所なんて、きっと知らない。ホスト仲間だったというのも、連絡を取りあっているという事も恐らく嘘で、僕を誘き寄せる為の、只の撒き餌だったのかも──
「……」
じゃあ、アゲハは今、何処にいるの……?
龍成が探してるって事は、本当に行方不明なんだろうか。
それとも──僕のように誰かに囚われて……
「──!」
ふと何かを感じ、天井へと視線を向ける。
と、そこには目立つように赤いランプが点滅している、剥き出しの防犯カメラがあり、そのレンズが堂々と此方に向けられていた。
ともだちにシェアしよう!