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第319話

お風呂が沸き、五十嵐に支えられながら脱衣所へと向かう。 手足の痺れだけでなく、筋肉も極端に削られ……少し歩くだけで息切れと眩暈がした。 「風呂、一人で大丈夫そうか?」 「………うん」 何とか足に力を入れ、グラグラする身体を支える。壁に片手を付き、服の裾にもう片方の手を掛ければ── 「手伝うよ」 見かねた五十嵐が、僕の代わりに服を捲り上げる。 中から現れたのは……いつの間にか付けられていた、数々のキスマーク。 まるで、透明な糊が張り付いて乾いたかのような、精液の跡。 「………うん」 何にもできない自分が、もどかしい。 ……情けない。 「……ほら、手上げて」 「……」 「寄り掛かっていいから」 「………うん」 五十嵐に身を委ねるようにして、両手を持ち上げる。 「……」 五十嵐の温もりと、五十嵐の匂い。 ……別に、嫌いじゃない。 だけどもう、五十嵐とは、変な関係になりたくなんてない。 浴室のドアを開ければ、湿度と熱気、籠もった湯気が襲い、直ぐに当てられてしまう。 一気に気力を奪われた後、頭が重くなって眩暈がした。 「……手、ここに付いて」 手首を掴まれ導かれたのは、浴室の壁。言われるままに両手を付けば、温度調節したシャワーを肩から背中に掛けられる。 「……」 久しぶりのシャワー。 項垂れれば、そのお湯が顎先へと流れ落ちていく。 僕の背中や脇を、五十嵐の手のひらが満遍なく摩る。こびり付いた汚れまで、丁寧に洗い流すように。 「──!」 不意にその手が、僕の腰から臀部へと滑り落ち……指先が、薄い尻の谷間を滑り落ち── 「……こっち、見ないでくれよ」 「……」 「お願いだから……」 耳元で囁かれる声。 割れ目に沿って指が蠢き、シャワーで濡らした小さな入口をノックする。 ゆっくりと、侵入してくる指先── 「痛く、ないか……?」 「………」 洗うだけ……の筈なのに。 ナカに入った五十嵐の指が、ゆっくりと丁寧に動くせいで…… 「──っん、」 やるならサッサと搔き回して、終わりにして欲しいのに。その仕草は、まるで挿入前の慣らしのようで…… 「……っ、」 ザザ──ッ 性に対しての欲なんて、殆ど無かった筈なのに。心を許す人以外、絶対に……嫌だったのに…… あの時もそうだ。 五十嵐となんて、絶対嫌だったのに──身体が勝手に反応して、快感が簡単に掘り起こされて、僕を内側から壊していき…… ザ──ッ ……汚い…… 誰にでも反応してしまう、汚い身体──ぷるぷると内腿が痙攣し、痛さを逃しながら快感を求めてお尻を突き出してしまう。 「………はぁ、」 要らない…… こんな、汚い身体なんて……要らない。 「──っ、!」

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