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第328話

『気に入らない』 ──たった……たったそれだけ? それだけで、僕をターゲットにして……ここまでするものなの……? 「……!」 気付けば、僕の胸を弄んでいた愁の指が小刻み震えていた。 「………殺される」 大きく見開き、思い詰めたように固まる瞳。 大の大人がぶるぶると震え、声まで脅えている姿は滑稽に映る。 「……」 こんな奴を支配し、思い通りにしようとしていた事に、嫌気が差す。 幾らスネイクの実行犯だとはいえ、こんな状態の奴を手懐けた所で、どんな役に立つんだろうか。 僕の中で、黒くドロドロとした感情が支配していく。 「結局俺も、真木みてーに消されんだよ」 「……」 「だからその前に、一発ヤらせろよ。……どうせ皆死ぬんだから、今ここでシたっていいだろ。……いいよな?」 切羽詰まった声色。 何をそんなに、吉岡なんかに脅えているのか、よく解らない。 さっきまでの威勢の良さや、強運の持ち主だと自慢していた姿は、何処へ消えてしまったんだろう。 「『気に入らない』って、どういう──」 「あのねぇ。物事にイチイチ深い理由を結び付ける意味なんて、あるのかなぁ」 僅かに動揺した五十嵐の声を、直ぐに吉岡が声を重ねて遮る。 「警察に捕まった人達の動機、ニュースなんかで聞いた事ない? すれ違い様に肩がぶつかった。人前で注意されて恥をかいた。痴情の縺れ。尽くしたのにフラれた。偶々ムラムラしていた。日々のストレス解消。物事が上手くいかず、むしゃくしゃしていた。……ほら、ね。 どんなに複雑そうに見えても、蓋を開ければ理由なんて至極単純明快なんだよ」 「……」 吉岡の声が聞こえていないのか──愁が強引に、僕の服の中へと片手を突っ込む。そして僕の胸を弄りながら、もう片方の手で肩を押さえつけ、恐怖で戦きつつ思い詰めた表情を見せる。 「──!」 僕の唇に迫る唇。 咄嗟に片手のひらを盾にして、冷静に阻止する。それに気付いた愁が、思い通りにいかないジレンマから眉尻を鋭く吊り上げた。 「テメェ、今更勿体ぶってんじゃ……!」 「………いっかいで、いいの?」 荒げた愁を宥めながら蕩けた瞳を向け、誘うように首を少し傾げてみせる。そうすれば、鳩が豆鉄砲を食ったように愁の目が丸くなった。 「僕を、愁の好きにしていいよ。……でも、こんな所じゃ……やだ……」 言いながら片手を伸ばし、愁の太股にそっと触れる。そのままするすると内側へと移動し、布越しからでも解る程張り詰めた、硬くて熱いモノへと指先を這わせていく。 「愁と、二人っきりになれる所に連れてってくれたら……女子高生の制服姿になって、愁の上に跨がってスカート捲ってみせてあげる」 「……」 「それからココ。いっぱいしゃぶって、ご奉仕するね……」 熱く張り詰めたソレを、下から上へと指先で滑らせていき、先端辺りでカリッと引っ掻く。

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