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第335話

「………若葉って……確か、シリアルキラーってヤツじゃねーか……?」 愁の震える声に、ハッと我に返る。 「裏社会のトップ集団や政界、警察のお偉いさん方をも虜にして、手のひらでころころと転がしてるっつー、『サイコパス美人』だよな……」 「……」 「……モズがサイコパスを操っちまったら……どう、なっちまうんだよ……」 酷く脅えながらも、母親に甘える赤ん坊のように僕の胸元に顔を埋め、必死にしがみつく。 「大丈夫だよ、愁。僕がいるでしょ……」 感情の伴わない笑みを浮かべ、子をあやす母親の如く愁の頭をゆっくりと撫でてやる。 心の奥底から、臆病で弱い僕が顔を出したがっているけど……今はそんなの、許さない。 この状況を脱する為には、何としてでも愁を味方に付ける必要があるから。 「……ねぇ、聞いて。 若葉はまだ、昏睡状態みたい。でもね、もし仮に目覚めていたとしても……僕を探し出して、襲ってきたりなんかしないから」 「………は?」 僕の台詞に、呆気に取られたような顔を見せる。が、身体を震わせながらも恨めしそうに眉根を寄せ、攻撃的な眼で僕を睨みつける。 「なんで……んなコトが言えんだよ……!」 「……」 チョロい。 恐怖を植え付けられ、判断の鈍った人間は、優しく安心するように諭されると、自ずとその相手に心を開き、信用したいと思うようになる。 愁は単純だから、特に。 「それはね、僕が──」 ぽつ、ぽつ、ぽつ…… 窓ガラスに当たって弾ける大粒の水滴。 それは直ぐに数を増やし、フロントガラス全体を覆い、やがて叩きつけるような雨が襲う。 忙しなく左右に振るワイパー。ゴムと硝子の隙間から、不快な摩擦音が鳴り響く。 「まず手始めに、姫に手を出したがってたメンバーに声を掛け、溜まり場集めて集団レイプを実行させた」 「──!」 「最愛の恋人が集団レイプに遭う、なんて。……親子二代で同じ運命を辿る事になったのも……凄く面白かったしね」 「……」 ……そん、な…… 吉岡は、ハイジと寛司の繋がりを……全てを、知ってて…… 知ってて、わざと──

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