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第333話
「………若葉って……確か、シリアルキラーってヤツじゃねーか……?」
愁の震える声に、ハッと我に返る。
「裏社会のトップ集団や政界、警察のお偉いさん方をも虜にして、手のひらでころころと転がしてるっつー、『サイコパス美人』だよな……」
「……」
「……モズがサイコパスを操っちまったら……どう、なっちまうんだよ……」
酷く脅えながらも、赤ん坊が甘えるかの如く僕の胸元に顔を埋め、必死にしがみつく。
「大丈夫だよ、愁。僕がいるでしょ……」
感情の伴わない笑みを浮かべ、子をあやす親のように、愁の頭をゆっくりと撫でてやる。
心の奥底から、弱い僕が顔を覗かせたがっているけど……今はそんな事、許さない。
今この状況を脱する為には、何としてでも愁を味方に付ける必要があるから。
「………ねぇ、聞いて。
若葉は、まだ昏睡状態みたい。……もし仮に目覚めていたとしても、僕を探し出して襲ってきたりなんか、しないから」
「………は?」
僕の台詞に、愁が驚いた様な呆気に取られた様な顔をする。そして身体を震わせながらも恨めしそうに眉間に皺を寄せ、攻撃的な目で僕を睨みつけてきた。
「なんで……んなコトが言えんだよ……!」
「……」
チョロい。
恐怖を植え付けられ判断の鈍った人間を、優しく諭しながら安心させれば、自ずとその相手に心を開き、信用したいと思うようになる。
愁は単純だから、特にね。
「それはね、僕が──」
ぽつ、ぽつ、ぽつ……
窓ガラスに当たって弾ける、大粒の雫。
それは直ぐに数を増やし、フロントガラス全体を濡らし、やがて叩きつけるような雨が襲う。
ワイパーが忙しなく左右に動けば、ゴムと硝子の間からする摩擦音が、不快に響く。
「……まず手始めに、ハイジが留守の間、姫に手を出したがってたメンバーを利用して、溜まり場に連れ込んだ姫を集団レイプさせてみた」
「──!」
「菊地が犯した事件の罪を、息子のハイジが受けるって構造になったのも……凄く面白かったしね」
「………」
……そん、な……
吉岡は、ハイジと寛司の繋がりを……あの時から知ってて……
知ってて、わざと──
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