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第308話

何が言いたいんだろう。 何処かもだもだして、もごもごと口籠もっているせいか、所々しか聞き取れないけど…… ……五十嵐の言いたい事が、よく解らない。 「さっきも言ったけど……工藤を抱きながらやっと気付いたんだ」 「……」 ……はぁ、はぁ、 やっぱり、おかしい…… 胃が突っ張るように痛い。 一度呼吸を止めてから、ゆっくりと肺の中の空気を全て吐き出す。 重いのか軽いのか、よく解らない。 脳内はふわふわとしながら、身体は鉛のように重くて。悪寒が走って全身が震えるのに、突然熱くなって…… 朦朧としていく、意識。 「俺、工藤のこと……」 ……ハァ、ハァ、 自身を抱くようにして二の腕を掴み、熱く乱れる呼吸を何とか整えようとする。 ……けど…… 「………工藤?」 「……」 「大丈夫か? ……どっか、苦しいのか?」 渇いて張り付いた喉を無理矢理開いたようで、ガラガラと鳴って絡む喉を整えようと、五十嵐が数回咳き込む。 「………ん、」 大丈夫──そう、返事をしたつもりだった。 炎に包まれたような熱さと、突然襲う悪寒。次第に全身が痺れ、手足が痙攣する。 「………ん″ぅ、」 ツンとした臭いが鼻を突き抜けた後、何かが胃から迫り上がり、奇妙な音と共に喉を焼きながら吐き出される。 「……ぅえ″、っ………ぇ、」 ぶるぶると震える身体。 胃がうねり、中にあるものを全て排出しようと吐くばかりで……息が吸えない。 感覚が麻痺し、自分がどうなっているのか解らない。 「……工藤!」 掠れた五十嵐の声。 喉を切りながらも、遠くから叫び続ける五十嵐に答えようとしてるのに…… ……苦しくて…… 「……(らい)さんっ、!」 キーンと脳内に鳴り響く耳鳴りの向こうから、五十嵐の叫び声が聞こえた。 「蕾さん……、助けて………助けてください……! ……工藤が……! 工藤がぁ……!!」

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