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第368話 共鳴
×××
スクランブルエッグに焼いたソーセージ、くし形にカットしたトマトとレタスのサラダを添えた、ワンプレート。
バスケットには、焼いたトーストが二枚。湯気の立つ、インスタントのコーンス-プ。
それぞれ二人分の食事が、カウンターテーブルに並ぶ。
「……」
警戒しているのか。
蕾が僕の方に中々近付こうとしない。
キッチンで料理をしていた時、何度か目が合ったけど……何て声を掛けていいのか解らず、そのままやり過ごしてしまった。
こんな時、どうしていいか解らない。
何て、話し掛ければいいんだろう。
考えてみれば、僕は今までこういった場面が殆どなかったように思う。
小さい頃から、アゲハの事で鬱陶しい程周りから話し掛けられて。それが嫌で、自ら壁を作って人を遠ざけようとした。
その後も、僕を遠巻きにするクラスメイト達とは上手くいかず……学校へ行くのを止めた。
学校以外でも、僕に話し掛けたり絡んできたりする人としか、相手にしなかったように思う。
「……」
今更ながら……後悔してる。
もう少し、交流する術を身に付ければ良かった……って。
──でも。
もし、蕾がそれを望んでいなかったとしたら……?
昔の僕のように、誰からも干渉されたくなくて、壁を作っているんだとしたら……?
「……」
それならこのまま、黙っていた方がいいのかもしれない。
別に、一緒に食べる必要なんてないんだから。
スクランブルエッグを半分程食べた所で、胃がしくしくと痛み、食欲が失せる。
カチャン、と皿の上にスプーンを置き、席を立とうとした──時だった。
──カタンッ
僕の隣に、蕾が座る。
俯いたまま此方を見ず、片肘をテーブルに付いて黙々と皿の上のものを食べ始める。
「……」
距離が近いせいか、ふわりと蕾の匂いがした。
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