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第378話
「……おっと」
それを大きな両手が支え、僕の上体を強引に起こす。
「おい、さくら。大丈夫か……?」
「……」
「……オイ。壊れちまった、のか……?」
ぼんやりとする脳内。視界。
力の抜け落ちた身体は、重たい筈なのに………軽くて。
頬を何度も軽く叩かれてるのは解るけど……それに、答える余力なんてない。
「大丈夫だよ。……イっただけだからね」
屋久の言葉に、基泰が半信半疑な目を向ける。
「ほら、見てごらん。
基泰も俺も、姫のは一度も触ってないのに、沢山出してるだろ」
「………」
言いながら屋久が、その対象物を指差す。
飛び散って濡れたシーツ。起こした時に付いたのだろう、内腿の間。その周辺。
俄に信じられないといった様子で、基泰が僕の吐き出した精液にそっと触れる。
「……基成 ……」
「……」
「まさか、さくらには………使ってないだろうな」
粘着したソレを掬い取り、指に付着したまま静かに握り拳を作る。
その声は真剣そのもので。焦りと怒りを秘めているようにも感じた。
「基泰 」
「……」
「………そんな勿体ない事、俺がすると思う?」
冷酷で、威圧的で。
しかし沈着した様子で基泰に問いかける。
「………」
ベッドに片手を付き、身を乗り出す。そして、もう片方の手を伸ばして僕の頬を撫でると、折り曲げた人差し指を顎先に引っ掛け、クイッと上に持ち上げる。
「さくらは俺達の、大事な大事なお姫様だ。
俺達の手で大切に守りながら、俺達好みに育てるんだろう……?」
ぼんやりと白んだ視界いっぱいに映る、屋久の顔。
冷酷なのか、したり顔なのか、それとも、笑顔の仮面を被っているのか……その表情までは覗えない。
「……そう、だな……」
歯切れの悪い基泰の声。
ぎゅっと握り締めたままの拳。
スッと屋久の顔が近付き、唇が重ねられる。
「………ん、」
締まりのない僕の唇は、それを拒否する事もせず、侵入してくる舌を簡単に受け入れる。
生温かな感触。絡み付く熱──それを最後に、僕の意識は完全に遠退いていった。
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