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第387話

「……さぁ、着いたよ」 ガタン。 助手席のシートが倒され、おじさんが女性の上に跨がる。 縛った両手を座席のヘッド部分に引っ掛け、脱がせたジーンズを後部座席へと放り投げる。 低い所で、暫く淫らな水音がしたかと思うと、女性の左足が持ち上げられ、少し力の抜けたおじさんの溜め息が聞こえた。 上下に揺さぶられる女性。 その動きに合わせて揺れる車内。 は、は、は、……と、湿気を含んだおじさんの短い吐息。ギラついた眼光。 その異様な光景が、大きく見開かれた蕾の瞳の角膜に、強く焼き付けられる。 「………いいか、蕾。女はよく、『嫌』『止めて』と騒いで抵抗するが……それは全て、場を盛り上げる為の演技だ。 喜んでるんだよ。 男の欲望を煽って、乱暴に犯されたくてな」 「……」 「いいか。よく覚えとけ」 見開かれたまま、微動だにしない蕾の瞳。 瞬きも忘れ、ただ、その異様な光景をじっと見つめる。 初めて映るソレに、恐怖と異常さを感じながらも、悪い夢でもみているかのような感覚に陥る。 現実だと思いたくない。……でも、動けない。 まるで、無機質なものに成り代わったかのような錯覚さえ起きる。 車内に設置された、小型カメラのように── ──カランッ。 「……」 氷が溶け、グラスとぶつかった涼やかな音がして、ハッと我に返る。 「………おねえさん……は、それからずぅっと、うごかなくて…… それで、おじさんが……うめた……」 「───!」 そんな……… 犯罪のほう助を強要された上に、数々の酷い光景を見せ続けられたなんて…… 動揺し、大きく揺れる視界。 直ぐに蕾から視線を外し、目の前にあるグラスに手を伸ばす。その表面が結露で濡れていて、指に纏わり付く感覚が気持ち悪く……直ぐに手を離した。 「……」 「それから、おじさんは──」 人を殺めてしまったせいか。それとも、発覚を恐れた為か。──おじさんは、大人しかった。 部屋から絶対に出るなと、蕾と類を脅して監禁。暫く外へは連れ出さなかった。 夜遅く仕事から帰ってきては、売れ残ったスーパーの惣菜やお弁当を二人に与える日々。 「……あぁ、ヤりてぇな」 箸で弁当を突っつきながら、おじさんが小さくぼやく。

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