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第390話

引き取られてから五年後。 蕾が10歳、類が7歳を迎える頃──次の犯行が行われた。 「お前、ヤってみろ……」 手首を縛られ、横たわる髪の長い女性。 場所は同じく、山頂付近の雑木林。 年齢的に声を掛けるには難しいだろうと、アッサリ蕾を引退させてその後釜を類に引き継がせる。 「そろそろ実践して、女を覚えてもいい頃だ。AVにも見飽きた頃だろうしな」 「……」 「なぁ」 「………はい」 おじさんが堪能した後の女性を、命令されるままに犯す。その光景を、今度は弟の類が見る事になろうとも。 「……」 感情なんてない。そんなものはとうに捨てた。 5歳で両親を亡くし、異常な性癖を持つおじさんに育てられ……犯罪の片棒を担がされながら、目の前で弟を性奴隷にされたのだから。 これがまともではない事ぐらいは、最初から解っていた。だけど、オカシイと思えば思う程、気が狂いそうになる。 誰にどうSOSを発信したらよいかも解らず……恐怖に心を支配されながら、ここまで身を投ずるしかなかったのだ。 この環境下がどんなに地獄でも、適応していかなければならない。 この異常で歪んだ世界で生きていく為には、この正常な感情を消し殺す必要があった。 ズッ、ズッ、ズッ、ズッ…… 放心しきった無抵抗の女性を、淡々と犯し続ける。 蕾の瞳から、光が消える。 「今回の勉強代として、貰っておく」 おじさんが、拾い上げた女性の財布から金を毟り取る。 更に女性のバッグを漁り、身分証明書を抜き取ると、精液に塗れ憔悴しきった裸体の女性にカメラを構え、手にした証明書も一緒に(かざ)して写真を撮る。 「………誰かに喋ったら、これを実家や職場、ネットにばらまいてやる。お前の人生、滅茶苦茶にしてやるからな」 「………」 気持ち、悪い……… 沸々と嫌な感情が湧き上がってくる。 モルの目の前で、そうしなければならなかった蕾の気持ちを思うと、胸が痛んで仕方がない。 蕾を横目でチラリと見れば、両手をテーブルの上に置き、背中を少し丸めて俯いていた。

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