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第405話
「……」
憂いを含んだ色素の薄い黒眼が、小さく揺れる。
焦点を合わせ、その水鏡に僕を映した後、直ぐにスッと外される。
テーブルに置かれた手。苛立ちを隠すかのようにその指を動かし、再びテーブルをトントン…と叩く。
「バカな俺は、基成の言葉を鵜呑みにして………その提案に乗った。
それが『共有』の始まりだ」
「それじゃ、始めようか」
デート帰りに立ち寄った、ラブホテルの一室。
ハンディカメラを構えた屋久が、ベッドにいるバスローブ姿の彼女にそう告げる。
「………で、でも………」
ギシッ……
腰にタオルを巻いた基泰がベッドに乗り、躊躇する彼女の肩を押して組み敷く。
「やっぱり、こんな事っ、……!」
「………」
パタンと閉じられる、デジカメの液晶部分。その奥に現れた、冷酷な瞳。
ニヒルな笑みを浮かべた屋久が、カメラをゆっくりと下ろしながら彼女へと近付き、ベッドに片手を付いて顔を寄せる。
「──君の、僕への愛は……そんなものだったのかな?」
屋久の指が彼女の頬に掛かり、そっと優しく撫で、ゆっくりと手のひらで包み込む。
「……」
「言ったよね。僕のやり方で、君を深く愛してあげるって。
………僕はね、心から愛する人が誰かに汚される姿を見るのが、堪らなく好きなんだよ」
「………え………」
彼女の目が大きく見開かれる。
こんな筈じゃなかった……と言わんばかりに。
「基泰に抱かれる君は……とても色っぽくて、綺麗なんだろうね」
「………」
「……ねぇ。僕の為に、できるよね?」
「……」
細められる瞳。その優しげで残酷な笑顔に圧され、震えながらも彼女が頷く。
「いい子だね」
「……」
「それじゃあ、始めるよ」
彼女の前髪を上げ、額に軽くキスを落とすと、元の位置に戻り再びカメラを構える。
その液晶画面の中で行われる、数々の凌辱。
この動画は脅しの材料となり、二人の所有物となった彼女は、この奇妙な関係を一切口外しなかった。
「最初のうちは………それでも良いと思った。形はどうあれ、俺を受け入れた彼女と、恋人らしい事ができたからな」
「……」
「でも、回数を重ねる毎に、なんか違うんじゃねぇかって思い始めて──」
「……」
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