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第407話

「考えてみれば、『共有』という狂気じみたルールで、ただ彼女を縛って弄んでいただけだったが…… それでも基成が、俺の為にしてくれたんだと思ったら……嬉しかったんだよな」 「……」 「それで充分──彼女を解放すれば、この馬鹿げたルールは無くなるもんだと思っていた」 『コンクリート事件』──基泰が中学二年の頃、世の中を震撼させる事件が起きた。 高校生達による暴漢。殺人。死体遺棄。そして逮捕。それらは都内最大の暴走族集団『スネイク』のトッブクラスであった為、チーム内は混沌とし、やがて分裂。一気に弱小化した。 そのスネイクに目を付けたのが、太田組幹部の桜井。分裂したチームを再度束ね、利用しようと考えていた。その為の新リーダーには、屋久が適任ではないかと親父に相談を持ち掛けるものの、親父は首を縦に振らなかった。 新リーダーとして、親父が下した人物は── 「………なぁ、基泰」 縁側で夜の日本庭園を静かに眺めていると、後方の闇からスッと屋久が現れる。 嫉ましげながら、何処か甘え縋るような猫なで声で。 「スネイクのチームリーダーに、任命されたんだってね」 「………ああ」 「よかったな。腕っぷしの強いお前なら、きっと大丈夫だよ。 ……何せ、この俺が一緒なんだからね」 「──!」 屋久の言葉に、驚かずにはいられなかった。 今回の一件で、久しぶりに顔を合わせた親父の口からは、屋久の話は一切無かったのだ。 「………あれ、どうした基泰。 まさか……俺を出し抜こうって思ってないか?」 「……」 その顔を、屋久が静かに覗き込む。 「──約束、覚えてるよね。 彼女を共有した時からずーっと、俺とお前は『一心同体』だって事をさ……」 クッと持ち上がる口の片端。 その瞳は氷のように冷たく、冷徹な笑みを浮かべていた。 「………その時ようやく気付いたんだ。あいつの本当の目的が。 ホテルで撮った動画は、何も彼女を脅す為だけじゃねぇって事もな」 喋り続けて喉が渇いたんだろう。テーブルの端に置かれたお冷やに手を伸ばし、ゴクゴクと喉を鳴らして一気に飲み干す。 「……」 動画なら、僕も撮られた。 命令されたとはいえ、五十嵐との……アレを。 基泰を遮るように目を伏せ、テーブルの下でギュッと手を握る。 その後、あの動画を使って何かを要求されたりはしていない。あんなものを撮って、一体何に使うつもりだったんだろう。 ………でも。 それ以上に引っ掛かるものがある。 それは──スネイクの新リーダーが、今目の前にいる(基泰)だという事。

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