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第416話

その笑顔は、いつかのモルに似ていて…… 胸の奥から顔を覗かせていた罪悪感が疼き出し、僕を苦しめる。 「……蕾……」 突然、その胸の内を吐き出そうとする僕に、蕾はキョトンとした顔を見せる。 「……」 「僕……モルに、酷い事した……」 それは──スネイクのアジトへ連れて行かれる前に立ち寄った、展望台での出来事。 吉岡に見せられた、携帯の動画に動揺した僕は……最期までモルを、信じきれなかった。 『信じて下さいッス……!』──モルは、必死でそう訴えていたのに…… 「……僕は、いつだってモルを信頼していたのに……何であの時、信じてあげられなかったんだろう……」 男達に捕らえられ、暗闇の中へと消えていく──モルの傷付いた顔。 今までモルは、どんな事があっても僕の味方でいてくれた。優しく寄り添いながら僕に元気をくれて、僕の存在を肯定してくれた。 そんなモルが、僕に酷い事なんて……する筈がないのに── 「だから……僕は、蕾に助けて貰う資格なんて、ない……」 「……」 こんな風に、胸の内を吐露するのは余り無くて。感情を言葉に変換して吐き出していくうちに、それまで重苦しかった心が次第に軽くなっていく。 こんな事、モルの兄である蕾に伝えたって、仕方がないのに…… 「──助ける、!」 真っ直ぐ見つめる蕾が、当たり前のように言葉を紡ぐ。 「類、言ってた。『姫を助ける』『姫は、俺の希望だから』って」 「──!」 『姫は、希望だから』 ──瞬間、モルの言葉が蘇り、蕾のそれと重なって脳内に響く。 脳裏に浮かんだのは……笑顔を見せる、モルの姿。 壮絶な過去を感じさせない……周りを明るく元気にさせる、太陽のような笑顔。  「類、も……さくら、助ける。だから、大丈夫……」 「……」 「……大丈夫、だよ」 その笑顔が、蕾の表情と重なる。 「俺、も……さくら、希望。 もう……壊れるさくら、見たくない」 「……」 ………壊れたり、しないよ。 もう、壊れたりしない。 「──うん、ありがとう」 そう言って微笑んでみせれば、僕の顔色をじっと伺っていた蕾が、ホッとしたように微笑み返す。 屈託のない、幼子のような笑顔で。

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