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第439話
忠告、のつもりなんだろう。
もし持っているのが屋久にバレたら、僕だけじゃない。吉岡もMも、危うい立場になる。
……でも、それなら何でわざわざ僕に見せたりしたんだ。
最初から渡すつもりがないのなら、吉岡の頼みなんて断ればいいのに……
「──いいよ、捨てなくて」
ガチャンッ
閉まるドアの前に立つ、屋久。
いつの間に入ってきたんだろう。全然気付かなかった。
此方の様子を楽しげに眺めながら、屋久がゆっくりと近付く。
「山本竜一、だっけ? 彼から貰った大切なもの、なんだってね」
「……」
僅かに驚きを見せたMの手からスッと箱を取り上げ、僕に見せ付けるように中身を取り出す。
「太一 達が、非道い事をしたね」
「……」
「安心しな。……基泰と蕾が、いま後始末をしている所だから」
「……、」
後始末……って……
驚きを隠せず、真っ直ぐ屋久を見つめれば、それに気付いた屋久が静かに僕を見下ろす。
「そんなに太一が心配? 本当、変わらないね。……まぁ、そこが姫の良い所でもあるのかな」
キラリと光る、十字架のシルバーピアス。
僕の顔を覗き込みながら横髪に指を通して搔き上げ、剥き出された耳朶にそのピアスを当ててみせる。
「……良く、似合ってるよ。
体調が戻ったら、ここに穴 を開けようか」
「……」
「ところで……」
ピアスをスッと引っ込め、口の端を持ち上げて微笑む屋久。
「身体の具合は、どうかな?」
「……」
此方が苦しくなる程に、酷く優しい笑顔。だけど細めた蒼眼の奥には、何の感情も宿していない。
ベッドサイドに腰を下ろし、ピアスを箱に戻したその指先が、僕の頬にそっと触れる。そのまま軽く折り曲げられる四本の指。当てられる背面。
「………心配したんだよ、これでも」
少しだけ冷えた手。それが、ゆっくりと僕の肌の上を滑り、僕から熱を奪う。
その様子を横目に、Mが点滴袋をホルダーから外す。
「痛くて、怖かったよね」
「……」
「解るよ。……俺も昔、同じ様な目に遭った事があるから」
「……」
屋久の細めた目が何処か遠くを映す。
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