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第441話

煌びやかな繁華街の一角。 ビルの地下駐車場に駐めた車から引き摺り降ろされた屋久は、二人の男に小脇を抱えられながらエレベーターに乗る。 「………入れ」 辿り着いた一室。言われるがまま、開いたドアの内側へと入る。 何処かの事務所だろうか。肌で感じる、穏やかではない雰囲気。その奥──ドアを隔てた向こうにある応接室へ、乱暴に放り込まれる。 「……」 床に両手を付き、伏せた顔を上げれば……父親よりも年のいった、和装の男が目に飛び込む。ただ静かに座っているだけのその男からは、心底震えるような強いオーラを感じた。 「服を脱いで、四つん這いになって足を広げろ」 「……」 屋久の背後に立つ男が命令する。 視界の中心に映る和装の男の周りには、黒尽くめの男がおよそ八人。全て澄ました顔をし、蔑んだ目で屋久を見下ろしている。 扱いは、まるで犬以下。先程まで死を意識していた屋久は、それを屈辱とも感じずその命に従う。 「では、ここからは私が」 黒尽くめの一人が、そう言ってポケットから手袋を取り出す。そして近付きながら徐にそれを嵌め、四つん這いになった屋久の背後に回り込むと、腰を落とす。 「──!」 男達の視線が突き刺さる中、突き出した尻穴に容赦なく突っ込まれる指。 「………相当奥まで入れられたようですね。器具を使って掻き出す必要があります」 ドライな声で現状を報告すれば、傍観していた和装の男の指先がクイと動く。 何処からともなく現れた男の手には、何やら道具の入った箱が。 「殺しても構わない。腹を掻っ捌いてでも、全て回収しろ」 それは、まるで拷問器具。 使い方は解らない。けど、その鋭くてエグい形容に、屋久の身体が本能で震えた。 「──ッッ、ア″ゥあぁあ″ぁァ″ァ……ッ!!」 果実の種をくり抜くかの如く、その扱いは酷いもので…… 全てが抉り出された時にはもう、一生排泄ができないのではないかという程の深い傷と、おびただしい量の血液が滴り、辺りの床を汚した。 「……」 ……そんな…… 男達の見ている前で、そんな……残酷な事が…… 腹の奥に鈍い痛みを感じ、そっと手を当てる。蘇る、嫌な感覚。 「俺はボロキレのような扱いを受け、解放された。既に意識は殆ど無くて、このまま死んでしまった方が楽なんじゃないかとも思ったよ。……けど、どうせ死ぬなら最期ぐらいは喰らいついてやろうと思い直してね。不様だけど、床を這いつくばりながら必死で親父に近付き、取り押さえようとする男達を他所に、その足下に縋りついて睨みつけたんだ」 「……」 「ふふ……そしたら親父、そんなボロキレの俺を冷たく見下げてこう言ったんだよ。──『……お前のその根性、気に入った』ってね」

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