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第455話
「その為なら俺は、傷付いても構わない。多くの他人を傷つけたっていい……この身を盾にして、信じた仲間を守るよ」
「……」
トクン……トクン……
僕をじっと見下ろす、ビー玉のような蒼眼。
屋久の手が、僕の髪をそっと撫でる。
冷たい指先。そのせいかは解らないけど、身体がぶるっと小さく震える。
「だから姫──この先決して、俺を裏切ったりしないでくれよ」
ギシ……
もう片方の手が、僕の顔の隣に置かれ……さらさらと金色の横髪を肩から溢しながら、屋久の端整な顔が近付く。
「……うん」
「いい子だ」
そっと搔き上げられた前髪。その下から覗いた僕の額に、優しく屋久の熱が落とされた。
──バンッ
突然鳴り響く、大きな音。
一変する空気。
その一瞬で、シャボン玉が弾けたかの様に、ぱちんと目が冴える。
驚いて見れば、蕾の寝床でもあるソファの前で、蓋を閉めたキャリーバッグを起こす、Mの姿が。
「……」
その瞳は何処か冷めていて──だけど、纏う雰囲気はピリピリとしていて……
「M」
「帰る」
屋久の呼びかけにぴしゃりと言い放つ
と、Mはキャリーバッグをゴロゴロと引きながら、前のめりで足早に去っていく。
Mの手がドアノブに掛かった時、思い切って声を掛ける。
「………ありがとう」
「礼ならいらない」
無感情な声。無関心な態度。
しかし、僅かに振り返り僕を尻目に見たMは、冷徹な視線で僕を一蹴した。
「私はあんたの事、嫌いだから」
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