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第462話

──ズキンッ 感覚の殆ど無い身体に、心臓を抉られるような衝撃が走る。 「……」 太一の、言う通りだった。 もし基泰の事が無ければ……今頃どうなっていただろう。 吉岡の計画が予定通り遂行され──用済みとなったこの身体は、何処か冷たい土の中に埋められていたかもしれない。 「なんてね」 突然屋久が、クスクスと笑いながら悪戯っ子のような笑顔を見せる。それにどう反応していいか解らず……戸惑いながら屋久の顔をじっと見つめる。 「確かに最初は、姫をこのチームに引き入れるなんて思ってもみなかったよ。 ただ守られるだけの存在なんて、足手纏いにしかならないからね」 「……」 「でも……」 頬に当てていた手が、ゆっくり肌の上を滑らせながら下へと移動する。細い首筋。そこを、まるで腫れ物にでも触るかのように、そっと指先で撫でる。 「ホストクラブの控室で、プレイヤー(キャスト)二人に襲われそうになった時……顔に似合わず会心の一撃を食らわせたよね」 「……」 「その光景を見た時、見直したんだよ。連絡先の番号を教えたのも……実は、陰ながら姫の助けになりたいと思ったからだ」 ジャラ…… 何処から取り出したのか。もう片方の手には、黒革の首輪。 「……!」 それをゆっくりと丁寧に、僕の首へと巻き付ける。 まるで、儀式か何かのように。 「……姫を発見した時、(ここ)を絞めた痕があった。一方的に己の欲望をぶつけ、殺そうとまでしたのかと想像したら……流石の俺も、頭に血が上ったよ。 一方で、やはり姫を囲うべきではなかった、ともね」 「……」 「でも、聞いたよ。問い詰めたアイツらから。 太一にレイプされた後、イッたかどうかを聞かれて、君はこう答えたんだってね。 『イく訳ないだろ、バーカ。全然足りねぇよ、このクソ短小が!』」 言い終わるか終わらない内に、再び屋久が、クスクスと笑い出す。 その姿に酷くホッとしながらも、不穏な気持ちばかりが渦巻いていく。 「……」 え──僕が、そんな事…… ……それで…… それで太一が、突然豹変して……僕の首を……?

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