471 / 558

第468話

………ぅ、うぇっ、お″ぇぇ……っ、! 突然襲う、強烈な吐き気。 身体をくの字に曲げ、止みそうにない嗚咽を何度か繰り返す。 苦しい……何で…… お腹の中や喉が、熱くて……痛い……! 「………姫っ、」 隣で寝ていた屋久が起き、僕の肩を掴む。 ガクガクと小刻みに震える身体。異常な寒気。何度も繰り返される嗚咽に、やがて胃から熱いものが迫り上がる。 ドサッ…… ベッドから落ち、身体を丸めてうつ伏せる。 「……ぅ、う″ぇ、……ぇ……!」 胃の中は、殆ど空っぽの筈なのに。 口から鼻から苦い物が吐き出され、粘膜をひりひりと焼き付ける。 ベッドを下りた屋久が、僕の背中を摩ってくれる。 再び襲う、嗚咽。寒気。胃の痙攣が中々治まらなくて……苦しい。 「気にせず、全部吐いていい」 「……」 このまま、死んだ方がマシ── 手足に力が入らず、身体を起こす事も出来ず……ただ床に顔を伏せ、もう何度も吐いてる。目の前には、黄色と緑と……少し赤が混じった、液体。 はぁ……はぁ……はぁ…… 「……」 やっとの事で、落ち着いてくる。 何とか呼吸を繰り返すものの、やけに喉が張り付いてしまい。切れてしまったのか。息を吸う度に、ピリッと鋭い痛みが走る。 ……はぁ……はぁ……はぁ…… 過呼吸を起こしているんだろう。目の前が、霞んでいく。 「……」 「着替えとタオル、持ってくる」 何時になく真剣な声。僕を宥めようとしていた手が離れ、一気に不安が襲う。 世界に……ひとりぼっち。 ……怖い。やだ。 行かないで。 一人に、しないで…… 「……」 ………ふふ。 僕の為に、あんなに必死になるなんて。 ヘンなの。 冷徹なキングだの、サイコパスだの。身の上話を懇々と聞かせて、この僕を支配しようとしてた癖に。……衰弱したら、こんなにも甘いなんて。 罪悪感、とかいう奴? 所詮屋久も、人の子って事か。 クク…… ならもう少し、このまま僕の為に動いて貰おうかな。 「──!!」 ……なん、で……そんな事…… バチンッ── 目の前で、何かが弾ける。 条件反射的にギュッと目を瞑るものの、鋭利なもので脳幹を貫かれたような痛みが走った。 僕の頭の中で、ハッキリと聞こえた声。 それは、僕の声そのもので。脳内がひやりと冷たくなる。

ともだちにシェアしよう!