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第468話
………ぅ、うぇっ、お″ぇぇ……っ、!
突然襲う、強烈な吐き気。
身体をくの字に曲げ、止みそうにない嗚咽を何度か繰り返す。
苦しい……何で……
お腹の中や喉が、熱くて……痛い……!
「………姫っ、」
隣で寝ていた屋久が起き、僕の肩を掴む。
ガクガクと小刻みに震える身体。異常な寒気。何度も繰り返される嗚咽に、やがて胃から熱いものが迫り上がる。
ドサッ……
ベッドから落ち、身体を丸めてうつ伏せる。
「……ぅ、う″ぇ、……ぇ……!」
胃の中は、殆ど空っぽの筈なのに。
口から鼻から苦い物が吐き出され、粘膜をひりひりと焼き付ける。
ベッドを下りた屋久が、僕の背中を摩ってくれる。
再び襲う、嗚咽。寒気。胃の痙攣が中々治まらなくて……苦しい。
「気にせず、全部吐いていい」
「……」
このまま、死んだ方がマシ──
手足に力が入らず、身体を起こす事も出来ず……ただ床に顔を伏せ、もう何度も吐いてる。目の前には、黄色と緑と……少し赤が混じった、液体。
はぁ……はぁ……はぁ……
「……」
やっとの事で、落ち着いてくる。
何とか呼吸を繰り返すものの、やけに喉が張り付いてしまい。切れてしまったのか。息を吸う度に、ピリッと鋭い痛みが走る。
……はぁ……はぁ……はぁ……
過呼吸を起こしているんだろう。目の前が、霞んでいく。
「……」
「着替えとタオル、持ってくる」
何時になく真剣な声。僕を宥めようとしていた手が離れ、一気に不安が襲う。
世界に……ひとりぼっち。
……怖い。やだ。
行かないで。
一人に、しないで……
「……」
………ふふ。
僕の為に、あんなに必死になるなんて。
ヘンなの。
冷徹なキングだの、サイコパスだの。身の上話を懇々と聞かせて、この僕を支配しようとしてた癖に。……衰弱したら、こんなにも甘いなんて。
罪悪感、とかいう奴?
所詮屋久も、人の子って事か。
クク……
ならもう少し、このまま僕の為に動いて貰おうかな。
「──!!」
……なん、で……そんな事……
バチンッ──
目の前で、何かが弾ける。
条件反射的にギュッと目を瞑るものの、鋭利なもので脳幹を貫かれたような痛みが走った。
僕の頭の中で、ハッキリと聞こえた声。
それは、僕の声そのもので。脳内がひやりと冷たくなる。
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