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第482話

……怖い…… 男達に気付かれたらと思うと、身体が勝手に震える。 怖い……どうしよう…… 緊張と眩暈で、目の前が真っ暗になる。 何とか壁に縋りつき、それを頼りに階段へと向かって歩き出す。 しん…… 階段を半分程下りた所で、下の廊下が静かな事に気付く。 もしかして、誰もいない……? それにほっと息をつきながらも、警戒心は緩めず、一段、また一段と階段を下りる。 日の暮れた、薄暗い廊下。 例の部屋の襖からは、最中の声がしない。 誰かがいる気配もなく、不気味な程静まり返っている。それが余計、僕を不安にさせる。 まさか……男達がいるっていうのは、屋久のはったり……? ……でも、それなら尚更。ハルオの時のように、外側から鍵を掛ける筈…… 「……」 構えたナイフを静かに下ろし、男達がいるであろう襖の前を、息を潜めながら通り過ぎようとした──時だった。 「……おい、」 「──っ、!!」 突然、背後から左肩を掴まれ──驚いて振り返る。 両手でナイフを構える。震える刃先。 目の前に立ちはだかった、厳つい男性。 「お前……キングのオンナか」 一瞬見開いた男が目を眇め、口端をクッと持ち上がる。 「物騒なモン持って、どうしたよ……」 トン、と手首を叩かれ、簡単にナイフが床に転がり落ちる。 それを遠くへ蹴り飛ばすと、男は僕の顎下に大きな手を差し込み、強引に顔を持ち上げた。 「へぇ……良く見りゃあ、その辺の女より可愛いじゃねぇか」 「……」 「あのイチが、拘ってただけはあるなぁ……」 舌舐めずりをし、僕の顔面を舐め尽くすように見ながら独り言のように呟く。 「……なぁ、俺にも味見させろや」 怪しく光る、男の双眸。 ニタつく口元。 ──ドンッ 首輪ごと喉元を掴まれ、そのまま廊下の壁際に背中を打ちつけられる。貧弱な身体は、まるでボロキレのよう。壁に貼り付けにされ、喉に首輪が食い込んだまま──全身から力が抜け落ちる。

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