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第488話
リフォームしたんだろう。外観からは想像できない程、スタイリッシュな空間が広がっていた。
都会のオフィスビルにあるような、お洒落な玄関。白を基調とした壁。白いデスク。白い葉の観葉植物。受付嬢から数人の従業員まで、その誰もが白の服を纏っている。
「クレイジーだな……」
眩しそうに眼を細めた基泰が、ボソリと呟く。
「……よぉ」
案内された応接室に入ると、レザー調の白いソファの真ん中を、足を組んで陣取っている男がいた。
「久しぶりだな、基泰」
案の定、頭の天辺から爪先まで、異常に白に拘るその男性は──スネイクリーダーである、深沢。
その無機質な蒼い眼が僕を捉えた後、口の片端をクッと持ち上げる。
「……で。お前の言う『落とし前』ってのは………そこのオンナか?」
「っ、な訳ねぇだろ!」
冷静に揶揄う深沢に対し、威嚇する基泰。
一歩前へ出た基泰が、僕を庇うように片手を横に広げて見せる。
そんな基泰を鼻で笑った後、ソファの背もたれに肘を掛け、傾げた頭をその手で支える。
「まぁ、座れや」
「……」
深沢に促された基泰は、僕を引き連れ二人掛けのソファに座る。
「失礼します」と部屋に入ってきた白尽くめの女性が、手際良くテーブルにお茶とお茶菓子を出す。
その間、深沢の視線が真っ直ぐ僕に注がれていた。
「……菊地殺しの実行犯を、ここに連れて来ました」
「へぇ……」
ふて腐れた様子を見せながら、基泰がドア向こうに控えていた運転手のタクに指示を出す。
──ドサッ
床に放られ転がった男が、怯え震えながら手足を引っ込めた亀のように踞る。
相当殴られたんだろう。頭部を庇う腕には、痣や瘡蓋が目立つ。
「……!」
見覚えのある服装。背格好。
瞬間、ふと脳裏に浮かんだのは──真木や五十嵐が運転する車の隣によく居合わせ、僕にチョッカイを出していた……
──愁 ……!
「……」
……え……何で……
愁は、何もしてない。
ファミレスで集まった時に、その計画を聞いていただけで……何も……
「菊地が信用していた、処理班の一人だ」
「……ふぅん」
「これで……これまでのケジメをつけたい」
「……」
飄々とした態度の深沢が、冷たい蒼眼を動かして愁を見下げる。
その瞳と合ったのだろう。
震える両手を床に付き、額を床に擦り付け赦しを請う。
「………お、俺が、……やりました……!」
酷く震える声。
恐怖で掠れるそれを、懸命に絞り出しているのが解る。
「俺が……菊地さんを……殺し、ました……!」
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