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第493話

「……」 同じ後ろ盾に固執しない──つまりスネイクは、大友組ではない所とも繫がりを持ってるって意味だ。 例え、その相手が抗争中の組同士だったとしても、スネイクには関係のない事なんだろう。 自由…… 確か、寛司と深沢が話していたのを聞いた事がある。 半グレグループは、人の出入りが自由で、線引きのないアメーバのような組織だって。 ルールや秩序なんてない。 だけど、そんなものに囚われない自由に……本当に不自由さはないんだろうか。 「ケジメは、また改めさせて貰う。ヤクについても、基成に話を通しておく。 ……帰るぞ、さくら」 身形を整えた基泰が立ち上がり、僕の二の腕を掴んで引っ張り上げる。 眩暈を起こし、ふらつく身体。そんな僕を引き寄せて抱きかかえた基泰が、恨めしそうに深沢を見下げた。 「──ひとつ、忠告してやる」 持っていた揚げ煎餅を口に放り、噛み砕きながら既に冷めきった茶で飲み下すと、深沢が基泰を下から睨みつける。 「同じチームに、キングは二人も要らねぇ。いずれ何方かが、その座を引き摺り下ろされる時が来る。 ……スネイクの時のようにな」 「……キング、か」 帰りの車内で、基泰がぼそりと呟く。 チラリと様子を窺えば、表情を堅くしたまま真っ直ぐ前を見据えていた。 「確かに俺は、キングって器じゃねぇ。せいぜい、基成の用心棒って所だ」 「……」 「元々俺は、誰からも必要とされねぇ人間だったからな。別にキングだろうが用心棒だろうが、どうでもいい。居場所さえあれば、別にそれで良かったんだよ」 「……」 「……でも、そうじゃねぇんだよな」 黒眼だけを動かし、基泰が僕を見る。その瞳は何処か弱々しく、優しさと憂いを帯びていた。 「いずれコブラは、俺を切り捨てる。スネイクが影武者の基成を切り捨てたように。 ……そしたら俺は、居場所を無くしちまう」 「……」 再び視線を前に戻し、口端を持ち上げ、淋しそうに笑う。 まるで、行き場を無くしてしまった子犬のように。 「なぁ、さくら。……このまま俺と、何処か遠くへ行かねぇか?」 「……」

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