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第502話
……いいよ。
基泰となら……多分、平気。
こんな、酷い状況の中でも……きっと、心まで壊れたりしない。
「……」
『本当の奴隷になって貰うよ』──撮影が終わった後の事を考えると、凄く怖い。
想像しただけで、気を失いそうになる。
……だけど……覚醒したくない。
若葉になんて、なりたくない──
──トンッ
ギシッ、ギッッ……
「ガッついてんじゃねぇ。──このカスが!!」
ドゴッッ、……
カメラ片手にぶら下げ、ベッドに飛び乗った基成が、その勢いのまま基泰の脇腹を蹴り飛ばす。
「いつ、俺が許可したよ。………なぁ、基泰」
「……!」
──ゴッ、ドスッッ、
僕を跨ぎ、隣に転がった基泰の腹を容赦なく踏み付ける。
「答えろ!」
「……いや、してねぇ……」
身体をくの字に折り曲げ、腹を庇って踞る基泰が、苦しそうに基成を見上げる。
「………だよなぁ」
「……」
「俺が許可したのは、姫の着ている服を切り刻むだけだよな。……だったらそれ以上の、余計な事はするんじゃねぇよ……!」
テーブルの方をチラと見た屋久が「オイッ」と言って顎で指図をすれば、ノートパソコンを操作していた筋肉隆々の男がそれに従い、ベッドに近付く。基泰を鷲掴んでその身を引き摺り下ろし、尚も暴れて抵抗する基泰の片腕を背中に回し、いとも簡単に床に捩じ伏せる。
床に顔を押し付けられた基泰が、怪訝そうな目で屋久を下から睨みつける。
トンッ
ベッドから軽々と飛び降り、両足を付いた基成が、床に転がる基泰を真上から見下す。
「……お前……本当は何がしてぇんだ」
「何って……さっき言ったろ? 『公開撮影』だって」
揶揄うように、片手でカメラを宙に掲げて見せる。
「……但し、今回お前は外す。
代わりの奴なら、……さっきからあそこにいるだろ」
「──!?」
基成が指差した先には、……一階の廊下で、僕を襲った男。
いつからそこに居たんだろう。蕾のソファに、バスローブ姿で静かに座っていた。
「──ふざっけんな!!」
怒りに任せ立ち上がろうとする基泰を、筋肉隆々の男が肩を押さえながら腕を後ろに引っ張り上げる。痛みで足をバタつかせ抵抗を見せながら、声にならない声で基泰が吠える。
「あの野郎は、姫を──」
「逃走した姫を、捕まえようとしただけだ。それを、理不尽にお前に殴られて……可哀想だろ?」
「──テメェ、基成!!」
睨み上げる基泰に、冷ややかな笑みを見せながら屋久が吐き捨てる。
「俺の許可無く、勝手に姫を外へ出したお前への『仕置き』だ。
……そこで指咥えて、黙って見てろ」
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