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第504話 静

××× にちゅ……ぢゅぷッ、 膝を立て割り開いた下肢の間から、糸を引く程の粘着性のある水音が、否応なく僕の耳に届く。 もう、どれ位こうしているんだろう。 僕の中心にあるモノを弄り込みながら、引き裂かれた布地の隙間から恥ずかしそうに覗く桜色の蕾に、男が舌を這わせる。 「……」 生理的に一度イかされ、放ってしまった白濁液を塗り広げられ…… さっきからこうして、同じ事を何度も何度も繰り返されている。 「……クソ、またか」 「……」 耳元で、男が呻く。 男の切っ先を僕の後孔に宛がい、ぐいぐいと強引に押し込もうとするけど、角度が悪いのか、先程から襞の上をつるんと滑るだけ。 「どうなってんだよ、……クソッ」 向けられたカメラのレンズを気にしながら、焦燥した様子でボソッと呟く。 「……」 そんな事、僕に言われても…… 視線を下げ男を見れば、それが気に障ったんだろう。恨めしい眼で僕を睨みつける。 「……オイ、基成」 テーブルに指を立て、苛立ちを抑えるかの如くトントントン…と叩いていた隼人が低い声で唸る。 「いつまで、このクソつまらねぇ茶番を続ける気だ……!」 その一言で、それまでの空気が一変し、また別の不穏な空気を運ぶ。 ゆっくりとハンディカメラを下ろした屋久が、静かに僕の上に乗る男を肉眼で見下ろす。 「……全く同感だ。こんなに使えない奴だとは思わなかったよ」 酷く冷淡な声。 だけど、隼人と同等の苛立ちが、その声の端々から垣間見える。 「悪いが、隼人。コイツを処分して貰えねぇか。……得意だろ?」 言うなりカメラからチップを取り出し、席を立って此方に向かってくる隼人に投げ渡す。 「……ケッ、嫌味な奴だな」 口の片端を持ち上げ、受け取ったチップを手中に収めたまま足早にベッドへ近付き、男の髪を鷲掴んで乱暴に僕から引き剥がす。 「………オラァ、立て!!」 ドゴォ……! 髪を掴んだまま、空を切った隼人の右手の拳が、男の顔面に綺麗に入る。 「俺ァいま、相当気が立ってんだ。……テメェのせいでなッ!!」 「──!」 ──メギャッ、 拳を捩って更にめり込ませ、鼻を潰す。 ズドッ、ボギッ──続けて同じ場所をもう二発。 今度は左の頬骨辺りに打ち込まれ、男の顔が吹っ飛ぶ。 ぶちぶちぶち…… 髪の毛の抜け切れる音。 僕の足元──ベッドに仰向けに倒れて直ぐ、二つの鼻の穴から、たら…と鮮血が垂れ流れる。 ドスッ、ゴッ……、 それを容赦せず、間髪を入れず隼人が真上から拳を何度も顔に叩きつける。 振り上げた拳は鮮血に塗れ、その眼は狂気に満ち、濁ったドス黒い色を放つ。 それは、豹変したハイジやスネイクの深沢に匹敵するもので…… 「……」 足先を引っ込め、起こした上体に膝を引き寄せると、ぶるっと震える身体を小さく丸めた。

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