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第514話 幸せな末路

……眩しい。 きつく閉じた瞼を透過し、差し込んできたのは……先程とは違う光。 「……ぅ、う″あああぁあ″、あっ、ぁ……、!!」 空気を切り裂く、鋭い男の叫喚。 驚いて目を開ければ、僕の足元でぶるぶると震えながら踞る……屋久の姿。 「……、」 一体、何が起きたというんだろう…… ふと咥内に感じる、違和感。 何か、硬いような柔らかいような、弾力のあるものが残っている。 熱い。 どくどくと溢れるそれが、先程から閉じられない口の端から滴り落ちる。 ……それに…… 鼻から抜ける、酷く錆びついた鉄のような……強烈な臭い。 ボト…… 思わず舌で異物を押し出せば、真っ白なシーツに落ちる、赤黒い塊。 あ、あ、あ………… それが何なのか。 見開いた瞳にしっかりと映り、理解できるのに…… 余りにも、現実味が無くて…… ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…… 不規則に暴れ回る心臓。 寒気が走り、鳥肌の立つ背筋。 酷く、耳障りに響く……速くて荒い呼吸。 止まった空気の中で、僕だけが……おかしい…… ……おかしい…… 後ろで縛られた手の指が、動かない…… 「──テメェ!」 張り詰めた空気を切り裂く、男の怒号。 整わない呼吸のまま視線を向ければ、威嚇した目付きで此方を睨む隼人の姿が。 「何やってんだッ!」 「……!」 怖い…… 迫り来る隼人から、目が離せない。 ──バシンッ 蚊でも払うかのように、隼人が僕の頬を裏拳で叩く。 簡単に吹っ飛ばされ、視界がぐるんと回る。 「……」 逃げ、なきゃ…… 車酔いをしたみたいに、気持ち悪い。身体を動かそうとするけど、全然力が入らない…… 「……おぃ、この不様な成りは何だ。お前、それでもキングかよ。……あぁ?!」 踞ったまま呻く屋久の髪を鷲掴み、力任せに顔を持ち上げる隼人。 「調教、出来てねぇじゃねぇか!……こんな、色気もへったくれもねぇカマ野郎にチンコ噛み千切られたぐれぇで、おめおめ泣いてんじゃねぇよ!!」 「……ぅう″う…、っあぁ″ぁ″あ″あ……、!!」 両手で押さえた股間から、想像以上の血が溢れ、シーツを真っ赤に染める。 「……ちったぁ根性みせろや……基成さんヨォ」 泣き叫び、発狂する屋久を、隼人が威嚇しながら顔を覗き込む。

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