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第520話

「……やっと、効いてきたようですね」 男が、そのシールを剥がしてみせる。 そのついでとばかりに、横向きになった男が僕の足を引き寄せ、その足首の内側にキスを落とす。 「………ッ、」 「まぁ、いいでしょう。フェロモンの甘い匂いも、感度も申し分ない。 ただ……少々、色気に欠けている所が気に入りませんが」 グイッ 掴まれた片足を、僕の顔の横まで持ち上げられる。 必然的に浮いてしまう腰。男の前に曝される、局部。 「……お、っと」 自由な方の足で、男の鎖骨辺りを思いっ切り蹴り上げる。が、軽々とふくらはぎを取られ、反対側と同様持ち上げられてしまう。 屈辱的な格好。 なのに、身体が疼いて仕方がない。 羞恥の狭間に見え隠れする、諦めて服従しようとする心── 「……」 高鳴る心臓を抑え、開けたバスローブから覗く男のぶ厚い胸板から下へと視線を落とす。 下腹部──影になったそこには、赤黒くてらてらとした剛直が、鋭く反り返っていた。 「コレが、欲しいんですか……?」 「……」 「まだ駄目ですよ。もっと艶っぽく、僕を食い殺すような眼で誘惑しないと……」 その言葉とは裏腹に、早く喰いたいと息づいたソレが、涎を垂らしていた。 ぴた。 男が身体を寄せ、僕の窄まりにその先端が宛がわれる。 ぬめぬめとするソレが挑発するように角度を整えられ、外れないよう僕の両足を肩に掛け直して男がベッドに手を付く。 「君に、未来はありませんよ──」 ゾクゾクッ…… 耳元で囁かれ、身体中が粟立つ。 ……早く、挿れて。 早く…… その欲望ばかりで頭がいっぱいになり、逃れるように熱い息を吐く。 勝手に揺れてしまう腰。 理性が……沸き上がる本能に食い尽くされてしまいそう…… 「……ぁ、あ……」 お願い、挿れて…… ……これ以上、焦らさないで…… 懇願してしまいそうになるのを、必死で堪える。 心音が、早い…… 熱い涙が溢れ、口元がだらしなく開き……滑稽な姿だと、頭の片隅で思う。 でも── 「……」 つまらない。 そんな感情を宿した冷たい眼で、男が僕の顔を覗き込む。 きっと、僕を見限ったんだろう。若葉のような商品価値など無いと……

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