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第521話

男が細い溜め息をつく。 その瞬間……脳内から血の気がサッと引く。 「……」 やっぱり、僕じゃ無理だ。 見限られて殺されるか、この男達の言いなりになる未来しか思い浮かばない。 若葉のように相手を魅了させ、相手を支配する側に立てる人間じゃないと…… 「……」 もし、最初から若葉だったら…… そうしたら僕は、もっと強く生きられたかもしれないのに…… 例え狂気的であろうと、サイコパスであろうと。一人でも生きていける強さに……僕は何処か、憧れのようなものを抱いていた。 羨ましいとさえも。 でも──僕は、若葉じゃない。 僕は、僕だ── 「………何ですか。この噎せ返るような……甘ったるい匂いは」 「っ、……!」 男のモノが、ビクンッと反応する。 とろり……、と後孔から割れ目に沿って垂れ流れる、男の先走り。 その気持ち悪さと、強制的に疼いてしまう感覚に……濡れた瞳を少しだけ揺らす。 ぼやけた視界。目を見開いた男が、僕の耳裏に鼻先を押し付け犬のように嗅ぐ。 「……基成さんが、拘るだけの事はありますね」 「だろうな」 答える声の方に視線を向ければ、そこには、ビデオカメラを構える隼人の姿が── 「野郎に興味のねぇ俺でも……ムラッときてるからな。 ……基成が手放したくねぇ訳だ」 独り言のように吐きながら、隼人がベッド端に腰を掛ける。 「育成できそうか?」 「はい。……手練手管を教え込めば、使いものになりそうですね」 ぼんやりと聞こえる、男達の会話。 夢でもみているかのように現実味がないのに、宛がわれたままのソコだけが……異様に熱い。 その熱が……欲しい…… 欲しい……欲しい……欲しい…… でも、欲しいのは──コレじゃない。 「……いい顔、ですね。 欲望に溺れてしまいそうになるのを、必死で抗うその姿に……そそられます」 「……」 「此方も、耐えられそうにありません」 ズッ…… 僕の横髪を撫でた後、潤んだ瞳を間近に捉え……男の先端が、ひくひくする襞を僅かに押し広げる。 「……っ、ぁ」 殆ど、本能的に漏れてしまう嬌声。

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