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第522話
はぁ、はぁ、はぁ……
……身体が、欲望に飲み込まれてしまいそう。
薬が完全に回ってしまったのか。視界に映る全てが煌びやかに輝き、目の前の男が魅力的に見えて仕方がない。
「……これが、欲しいんでしょう?」
「……」
「素直に『欲しい』と言えば……挿れてあげますよ」
頭が、クラクラする。
男の発する声が、酷く魅力的に聞こえて……どうにか、なりそう。
酷く……喉が、渇く。
「……!」
……ダメ……
言いなりに、なっちゃ……
先程から、男の先走りがだらだらと垂れ、僕の尻の割れ目を伝ってシーツを濡らす。
この男も、我慢しているんだ。
澄ました顔をしてるけど……きっと、僕に挿れたくて仕方がない筈。
「……」
先に折れた方が負けだ。
それなら……圧倒的に、僕の方が不利。
「……い……言わ、ない……」
ハァ、ハア……
やっとの事で、意思を伝える。
もう……どれ位理性が持つのか、解らない。
……でも……
既にこれは、現実ではないのかも……
天井に、ミラーボールでもぶら下がっているかのように、キラキラと輝く光りがそこら中に飛び散り……万華鏡のように、幾つも浮かぶ男の顔がくるくると回って見える。
その曖昧な境界線に、僕の思考が麻痺していく──
「随分、強情ですね。
……でも、欲望に抗うだけなら……それ程珍しくありません……よ……」
声が、ヘン。
男の語尾が、まるで新体操のリボンのように、宙を舞ってうねうねと動く。
それをぼんやりと見つめていれば、それまで冷めていた男の瞳に、劣情の色が宿ったのが解った。
「……これが、若葉の血……ですか──」
はぁ、はぁ、はぁ、……
明らかに、先程までとは違う──男の息が乱れ、その呼吸音すら震えていて……
──ズンッ
容赦なく、一気に貫かれる。
瞬間──それまで我慢していた欲望が一気に溢れ、快感が波紋のように身体中へと駆け巡る。
「……あぁぁ″、ぁあ″あ……、っ!」
堪らず顎先を持ち上げ、仰け反る背中。
ずっと欲しかった刺激に、感電したように身体の表面がビリビリと甘く痺れていく。
「──凄ぇ。
若葉と違って大人しいが、想像以上だな。
……性欲モンスターの菊地が、他の女を切り捨ててまで、囲い込んだだけはある──」
「……!」
よく、解らない……
誰かの発した声が、上空で渦巻くそれに吸い込まれていく。
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