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第536話
その日の夕方。高速道路を走っていた真木の車が、玉突き事故に巻き込まれた。
緊急会合に現れた吉岡が、早々に捕獲した愁の証言映像を流した事により、首謀者は真木、実行犯は五十嵐とさくらの両名であると断定。各グループの長 がお抱えの処理班に通達すれば、迅速に真木を探し出し、捨て駒である特攻隊 がノーブレーキで追突。事故に見せかけ処理された。
「処理班に見つかる前に、姫を助けないと──でも、吉岡を信用している深沢さんに、俺の言葉なんて届かない。
焦ってばっかで、突破口が全然見えなかったんス」
「……」
「けど……」
そう言って顔を上げ、モルが苦笑いにも似た笑顔を見せる。
「……ねぇ、類くん」
取り巻きの彼女達を、深沢が用意したマンションへと送る途中、その中の一人に話し掛けられる。
「昨日から、浮かない顔してるわね。……もしかして、例の事件の事考えてない?」
言い当てられ、身体に緊張が走る。
バックミラー越しに彼女達の顔を見れば、その中の一人と目が合う。
「……」
「深沢は、吉岡を信用してる訳じゃないわ。元々あった疑念と吉岡の話が、偶々一致しただけ。
しかも、吉岡 はそれなりの証拠を揃えてる。疑う余地は無いの。……だから、仕方なく組んでるだけ」
「……仕方なく、ッスか?」
「そう。……彼、つまらないのよ。中身が無いの。ただ、表面上仲良くしておけば、顔が広い分、充分利用価値のある子よ」
「……」
「つまりね。類くんがそれを覆す程の確たる証拠を掴んでくれば、深沢は直ぐにでも耳を貸すと思うわ」
「……!」
それまで陰りを見せていたモルの瞳に、光が戻る。
「正直、何処まで事情を知っていたかは解んないんスけど。……彼女の話を聞いて、一筋の光が見えたんッス」
「……」
それからモルは、斡旋グループの処理班が兼任する『運び』も任されるようになった。
運ぶモノは、主に人間。デリヘル嬢の送迎代行。そして……
「調教済みの奴隷嬢 ッス」
「……え」
無意識に、首元を手で確認する。長い事付けていた、黒革の首輪。でも……もうそこには何も無い。
「スネイクは、取り立て、特殊詐欺、斡旋が主な収入源なんッス。荒稼ぎできる麻薬は、表向き一切やらないんっすよ」
「……表向き?」
「そうっス。斡旋グループの末端には、大友組の組員もかなり混じってて……麻薬を売り捌いてるのはその辺りだけなんッス。ていうか、スネイクを隠れ蓑にした、ほぼ大友組ッスね」
「……」
斡旋と麻薬──
もしかして、ハイジが飛ばされた所って……
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